満たされる
するするとズボンを脱がされてソックスガーターの足が晒される。
「ソックスガーター。やば、エロっ」
「エロって、そういう意味で使っている訳じゃないぞ」
「ズボンをおろしたらツルツルな足とソックスガーターだぞ、ヤバいだろこれって」
「もしかして、気に入ったのか?」
嬉しそうに笑みを浮かべると頬を摺り寄せてキスをする。
浅木は胸や尻より足なのか。キレイな生足は確かにそそるものがあるが、それが女性ならわかる。
三十を過ぎたおじさんの足に興奮するとは。それは……だからということか。
自惚れてしまう。じわじわと熱が上がり頬が熱くなった。
「なぁ、触るのは外してからにしろよ」
「そうだな」
足を持ち上げて外されていく。
パンツはまだ履いているが、この格好と立ち上がっている箇所を見られるのは恥ずかしい。
「足が辛いから、はやく……」
「隠されているのに厭らしく感じるのはなんでだろうな」
つい、と指で太腿を撫で、ちろちろを立っているモノを弄られる。
「ちょっと」
指が裏の部分を行ったり来たり、緩やかに刺激を与えられてムズムズとする。
「京、もう片方の靴下」
「布越しじゃ足りない?」
「解っているだろう」
足りないに決まっている。それが表情にでていたか、浅木が満足げに笑っている。
「ふ、わかったよ」
もう片方の靴下もなくなり、唇が直接足に触れる。
「はぁ、環って体毛が少ないよな」
「あぁ。髭もあまり生えなくてな。お陰で楽だぞ」
髭に憧れた時もあったが、どうせ生やしたところで似合わないし、処理をするのは面倒だ。
「それに、ここの毛も無くない?」
パンツに指をいれて上へと持ち上げる。まるで勃起をしているかのようにテントが張る。
隙間を覗くようにする浅木に、目を見開いて手を叩いた。
「覗くな」
「えぇ、どうせ見るんだからいいじゃん」
いや、覗き込まれる方がいらしさを感じる。
「相手に対していつもそういうことをしてるのか」
「しないよ。で、アンダーヘア、剃ってるよね?」
触っているのだからわかるだろうに。どうしても言わせたいのか。
「ここも薄いんだよ。だから剃った。それだけ」
もういいだろうと、太腿のあたりを蹴とばした。
「つるつるなのが嫌ならやめろ」
「やだね。触り心地いいしな」
パンツをおろされて毛のないあの箇所が露になる。
「ソックスガーターからのこれで大抵のやつは立つな」
そういう俺もだからとズボンを下ろして硬くなった箇所を晒す。
イイ大きさだ。
「まずはいれずに一回抜いていい?」
「あぁ。後ろはまだ使えないからな。一緒にやろうか?」
「いや、俺が。環は見てて」
大きな手が二つのモノを包んでこすった。
かたく感じやすくなったモノは手と互いのに触れて、気持ちよさに鼓動が激しくなる。
しかも浅木の顔が、より桧山を高ぶらせた。
「く、やばい、な、これ」
「あぁ、きょうの、てとアレが、ふれているんだ」
まるで夢のようだ。だって、こうなるなんて思わないだろう。
あの日、リセットされた関係なのだから。
どくどくとあふれ出る白濁が浅木の手を濡らす。
「あぁ、もったいなかったな」
ふたりでするのははじめてなのに。手を濡らすものの味をたしかめておけばよかった。
「もったいないって……」
浅木の眉間にしわがある。
「もしかして引いたか?」
「違う。愛されてるって実感してんの」
「そうか」
よかった。愛が重いと言われなくて。
一度好き合った相手だけに嫌われることだけは怖いから。
ティッシュをとり浅木の手についたものをふき取り、
「はじめては無理でも二回目があるしな」
自分の唇を舐めて目を細めると、浅木の喉がごくりの鳴った。
「ギャップが凄すぎてヤバイ」
「やっと君とこうすることができたんだから、色々と味わいたいじゃないか」
「へへ、それなら環が満足するまで味わってもらおうかな」
何回出来るかなと口角をあげる浅木に、年齢差をいじられていると気が付いて彼の乳首をつねってやった。
「痛ぇ」
「感じるようになるまで弄ってやろうか?」
「それは……遠慮しておこうかな」
否定するように両手を広げてみせる。
「ふふ、残念だ」
感じるようになるまで舐《ねぶ》るのもいいかと思ったのに。
「俺はする方で」
「俺も京に弄ってもらう方がいいかな」
弄って、吸って、転がして……じんじんと感じるまで。
煽るように自分の体を撫でれば、浅木の唇が啄んで。喉の奥から押さえきれない甘い声がもれでる。
「君とこうしていられることが嬉しいんだ」
全てを失ったあの日。幸せなど訪れることはないと思っていた。
「大和君のおかげだ」
テストのプリントで作った紙飛行機がふたりをつないでくれたのだ。
「そうだな。卒業アルバムも大和が見つけたんだし」
「会ったら抱きしめてしまうかも」
「そうしてやって」
浅木の唇がかさなり口内を舌で愛撫する。
おしゃべりは後でゆっくり。
「ん、ぁ」
舌が絡まりぞくぞくと体の芯がしびれた。
「はぁ、めぐる」
「きょう」
「俺さ、胸がいっぱいだ」
一緒にいると感情の起伏がすごいと抱きしめて耳元で呟いた。
「記憶は失ったままだけどさ、ここに感じるんだよなぁ」
拳を握り胸を叩く。思いだせなくとも浅木の中には桧山がいる、のかもしれない。
「京、俺も君といると感情の起伏が激しいよ。それだけ特別な人だったのだから」
「そうか。俺にとっても環はそういう存在だったんだな」
「京が学生だった頃、両想いだったんだ」
「そうだったんだ」
何度も頷き、そして浅木が桧山の頬を手で挟む。
「俺と環はこうなる運命だったってことだな」
と軽めのキス。
「京、たくさん愛してくれよな」
「もちろん」
覚悟しろよと涙でぬれていた目には欲でギラギラとしている。
ころころと変わる表情を傍で見られるなんて。
再び出逢えたこの運命に感謝しかない。
どんな夜を過ごそうがいつもの時間に目が覚める。
体に残る行為のあと。
さすがに三度は体力的に無理だったようだ。終わった後のことを覚えていないので落ちてしまったのだろう。
体は怠いし腰は痛い。だけどシャワーを浴びたくて立ち上がると腕を掴まれた。
「起きていたのか?」
「あぁ」
体を引き寄せられて唇にキス。なんて甘いあさなのだろう。
「シャワーなら一緒に行く」
「いいよ。ただしおさわりは禁止だぞ」
まだ浅木のモノを簡単に飲み込むだろうが。
「あー、うん、我慢できたらな」
これは触る気まんまんだ。
「しょうがないな。いこうか京」
「おう」
嬉しそうな彼に、結局は触るのを許してしまうのだろう。
とろりと後孔から太腿をたどりぽたりと下へ落ちる。
「あっ、ん」
それをかきだすのは自分の指ではなく太くてゴツイ、男らしい指。
かすめるだけでも感じてしまうのは、もっと太くて熱いものがそこをついたから。
「ここが、いい?」
コスコスと指が動く。そのたびに体がビクつき快感に震える。
「そこは、だめ、だ」
「気持ちよすぎて?」
たちあがる桧山のモノを、空いているほうの手でゆるりと撫でた。
「きょうっ」
「なぁ、中に入る許可がほしい」
耳元で、しかも切なげに囁かれてゾクゾクと芯がしびれる。
「ずるいなぁ、その気にさせて」
指よりも太くて熱いモノでなければおさまらない。まるで刀と鞘のように、だ。
「今日は一日俺の面倒をみること。いいね」
「わかった」
風呂から浅木に抱きあげられてソファーへと移動。濡れた髪をドライヤーで乾かしてもらう。
その後は後ろから抱きしめて朝食を食べさせてもらった。
恋人に甘やかしてもらえるなんて幸せなことだ。
「美味しい?」
「あぁ」
全体重を浅木にかける。よこからこちらを覗き込むように彼の顔がある。
「料理まで上手とか、こんなに素敵な彼氏ができるなんてな」
「しかも若いしな」
「わるかったな。おじさんで」
鼻先を指ではじけば、唇を尖らせて頬を摺り寄せてくる。
「わ、やめろ京」
「いやだね。甘えられる人が側にいるのに」
家族は大切な存在だと思えるけれど、心から甘えられないのだと桧山を抱きしめた。
「そうか」
「なぁ、環。昔の俺たちのこと聞かせてくれよ」
過去のことは浅木には辛い話しになるのではと口にしたことがなかった。
それでも知りたいと思うのなら、桧山は付き合うつもりだ。
「いいぞ。それじゃ俺たちの出会いからな」
懐かしくて大切な思い出。
お互いにどんな顔を見せるのか、それはふたりだけの……。