Short Story

後輩に奪われました

 経理課の一日の業務内容は、現預金の管理、仕分入力・帳簿作成、請求書の管理・発行、経費精算、支払対応などある。
 月末や年度末意外はだいたい定時で終えられる。
 今日も定時に仕事は終わり、豊来に見つからぬうちに会社を出ようと急いで帰り支度をして会社を出た。
 途中でスーパーにより酒と弁当を買ってマンションへと帰る。
「はぁ、帰れた」
 金曜日に、と豊来に言われていたので警戒していたのだ。
 だが会わずに済んだということはまだ仕事をしていたのだろう。
 人の話も聞かずに押しまくる男だけに何かあると思って構えていたのだが、いや、何もないに越したことはない。
 酒を飲みながら弁当を食べ、少し本を読もうかとカバンの中から小説を取り出した。
 いつもならとうに読み終えているのに、豊来か水守に邪魔をされて読み進まないのだ。
 休日中に読んでしまおうとは思っているが。
 しおりをはさんであるページを開き読み始めようとした時だ。訪問者を告げるチャイム音がなる。
 この時間に来るのは宅配か家族くらいだ。インターホンを覗きこむとそこにいるのは豊来だった。
「きちゃいました」
 悪びれることなく、素敵な笑顔で豊来はそう告げる。
 GPSアプリを勝手に入れられ、住んでいる場所も知られている。それでも家までは押しかけてこなかったのに。
「帰れ」
 そう冷たく言い放つが、相手は豊来だ。素直に帰るわけもなく、
「開けてくれるまでドアの前で待ってますね」
 と言われてしまう。
 そんなところで待たれたら迷惑だし目立つだろう。
 そっとドアを開くと何かにあたる。ドアの前に座っていたようだ。
「よかった。開けてくれて」
「いや、水守を呼んで引き取ってもらう」
「え、水守さんには住所を教えるんですか! ずるい」
 すでに住んでいるところを知っているのだからずるいとかおかしいだろう。
「ほら帰れよ」
 開いたドアを閉じようとするが相手は意外と力が強い。力負けしてその勢いで豊来へと飛び込んでしまった。
「そういうわりには熱烈な歓迎ですね」
 抱きしめられておしりを撫でられる。
「おま、どこ触って」
「あまり騒がない方がいですよ。聞こえちゃいますから」
 触っている奴が言うなと腹が立つ。
「中に入りましょう」
 そういうとドアを勝手に開いて中へと入り込んだ。
「招いたつもりはな、んっ」
「がまん、できないんです」
 好きなんです。キスの合間に何度もそう口にする。
「もう、言うな」
 ちゅ、とリップ音と吐息。そして繋がり会う透明の糸。
 それがぷつりと切れて、荒い呼吸を落ち着けようと胸に手を当てた。
「文辻さんと仲良くなれたらそれでいいと思っていたのに、話すだけじゃたりない、触りたい、キスしたい、その先に進みたいって欲が止まらないんです」
「わかったって。好きでなければ何度もキスはしないだろうよ」
「それで何度かふられてます」
「お前、重そうだものな」
「そうですよね」
 それは気にしていたのか、苦笑いを浮かべて文辻から離れた。
「文辻さん、急に家に来てしまってすみませんでした。帰りますね」
 急にそう口にて文辻の頬を指で撫でた。
 さっきまで我慢できないと言っていた男が呆気なく手を出すのをやめた。
 このまま帰したら前のような関係に戻るのだろう。
 それでいいはずなのに。
 たまになら豊来と過ごす昼休みも悪くない。そう思ってしまった。
「家にまで押しかけておいて、急にしおらしくなるのは気持ち悪い」
 彼の袖をつかんでそう口にしていた。
「それって俺にどうしろというんですか?」
 嬉しそうな、でも少し不安そうに豊来が文辻を見る。
「言っておくけれどお前と同じくらいの好きを返してはやれないよ」
 そして期待に満ちた顔となった。
「はい。俺はいつまでも待てます」
「だろうな」
 話を聞かないし押しが強いが、彼ほどに自分を愛してくれる人はいないだろう。
 頭の中に、ポン、ポポンという音と共に花が咲く。
 なんだかんだと言いながらも嫌ではなかったのだ。
「部屋に入れ。玄関でするのは勘弁だからな」
「はい」
 嬉しそうな顔を見れば心がほっこりと心があたたまるのだから。
 だがすぐに後悔した。豊来には甘い言葉を掛けてはいけない。つけあがるだけだ。
 ベッドでやった後に風呂へ入ろうと連れていかれて、手元が怪しいなと思ったら湯船につかりながら達してしまった。
 少しのぼせてしまったからベッドに横になり、豊来が冷たいタオルで冷やしてくれて飲み物を用意してくれた。
 具合が良くなったのでソファーを使ってくれと着るものと毛布を渡したのだが、一緒がイイというので横になったのだが、それから何度イかされたか。記憶がないから気絶してしまったのだろう。
 起きようとしたけれど後ろから抱きしめられているわ、豊来のが後ろに入りっぱなしだわで身動きが取れず、彼を起こして中から抜かせようと思ったのに目覚めの一回が待っていた。
 それが終わると甲斐甲斐しく世話を焼かれベッドにいるだけで食事が用意され、部屋の掃除から洗濯までしてくれた。
 トイレに行きたくなって起き上がろうとしたら豊来が手を貸してくれた。
「ありがとう。でもトイレくらいは行けそうだから」
「だめです。足がまだ少し震えていますよ」
「これくらいは」
 歩けなくもないので断るが、危ないからと手を差し出す。
「わかった。入口までて」
 豊来のことだ。何を言っても譲らない。それなら手をかりて入口まで向かうことにした。
 だが中まで一緒に入ってくるので、さすがにそれは嫌だと外へ出るように言う。
「手伝います」
「必要ないから」
 抵抗するが力が入らずに後ろから抱きしめられてしまう。
 そしてズボンを下ろされて下半身のモノをつかまれた。
「これは嫌だ」
「遠慮しないでくださいね。ほら、出しましょう」
「だから、やめ、くぅっ、はぁぁ」
 放出。
 これ程の屈辱はない。
 結局、豊来の手であれをあれしてしまった。心の中で思うのも恥ずかしい。
 豊来の頬は真っ赤に染まっていた。
 おもいきり頬を張ったからだ。これは自業自得なので叩かれた本人は満足げに笑顔を浮かべていた。
「俺に二度と触るな変態」
「嫌ですよ。色んな文辻さんを見たいですもの」
 楽しみですと手を合わせて首を少し傾ける。目は獲物を狙うように鋭い。
 はやまった。完全に。
「つぎは同棲ですね。文辻さん」
 いいところを探しておきますねと、気が付けば一緒に住んでいる、そんな先のことが見えてしまう。
「お前は、絶対に同棲なんてしないからな」
「俺の諦めの悪さは解っていますよね」
 だから厄介。現実となってしまうから。
「ずっと一緒にいましょうね。文辻さん」
 肩を抱き寄せて頭がこつんと当たる。
「まったく、甘えるのは上手だよなぁ」
「はい。愛してます」
「……んっ!」
 まだ出しっぱなしだったモノを撫でながら、首へとキスを落としていく。
「豊来、いい加減にしろ」
 しかも尻にはかたいモノが当たっていた。
「お・ま・え・はぁぁぁ」
 振り向いて豊来の脹らみを強く握りしめる。
「はうぁっ」
 イケメンも台無しの酷い顔。
「ぶっ、あははは、豊来もブサイクになるときがあるんだなぁ」
 ざまぁみろと口角を上げれば、参りましたと豊来が両手をあげた。