生涯の伴侶

幸せになろう

 クレイグに誘われた。準備は全て任せてくれと言っていたので何も用意はしていない。
 彼と一緒にいられるならそれで良い。そう思っていたが、この日の為に色々と考えていてくれたようだ。
 馬で遠出をするのも、美味しいお弁当も最高のものだった。
 後は友という関係から進むだけ。
 朱玉との約束があるから自分からしかける事は出来ないから、彼をけしかけた。

 雄に挑まれ、胸が高鳴らない戦士がいるだろうか。
 獲物を見るかのようにぎらついた目を向けられて、宗は興奮してしまう。
 ゴツイ手が肌を撫でまわしながら唇が胸へと吸い付く。
「んっ、クレイグ」
「いつも、水浴びをするお前を見る度に、舐めまわしてやりたいと思ってた」
「はっ、女の肌じゃ、あるまいし」
「お前の肌は美しいよ。ここだってぷっくりと厭らしくさせて」
 舌で嬲られて唾液で濡れた真っ赤に色ついた部分を、今度は指でつまむ。
「んぁ、そこばっかじゃなくて、お前のデカブツを後ろによこせ」
 いつかクレイグのを受け入れることが出来たら、そう思いながら後でイくことを覚えた。
 繋がりあって共に高まりあう。そう出来たら、どれだけ幸せだろうか。
 だが、クレイグは駄目だと言って首を横に振るう。
「平気だ」
 負担はあるだろうが、軟な体はしていない。
 それなのにクレイグはウンとは言ってくれなかった。
「駄目。今から長い道のりを馬で帰らなければならないんだ。若い時とは違うんだからさ」
「こんな時に年寄扱いかよ」
 確かに若い頃のようにとはいかないけれど、もしも身体は辛い事になっても、欲しがった自分が悪いのだ。
「これからはいつでも繋がりあえるだろ?」
 だから家に帰るまでお預けだ、と、クレイグの反り立つモノが自分のモノに当たる。
「クレイグ」
「今はコレだけな」
 ぐいと擦りつけられて、ビクッと体が震える。
 濡れた互いのモノはぬちゃぬちゃと音をたてて擦れ合う。その度に芯が振るえて声を上げる。
「ふ、あっ、クレイグ」
「ん?」
「すき」
「俺もだ」
 互いに欲を放つとそのまま草の上へ横になる。すると互いの手先が触れ、クレイグは宗の手をとりぎゅっと握りしめた。
「やっと手に入れた」
「俺は随分と待たされたけれどな」
「うっ、その分はちゃんと埋め合わせするから」
「当たり前だ。うんと甘えさせてもらう」
 宗が寝ているクレイグに覆いかぶさると、ちゅっと軽くキスをし、身を起こした。
「さ、早く帰るぞ。色々としたいことがあるからな」
「やだ、ソウさんたら、ナニする気よ」
 エッチ、と、口元に掌を当ててニヤニヤとするクレイグに、
「馬鹿な事を言ってないで、帰る支度をしろ。宵の鐘に間に合わなくなるぞ」
 と脛を蹴りとばされた。
「うおっ」
 足を押さえて涙目を浮かべるクレイグに、宗は冷たい目を向けて服を投げつけ着替えるように言う。
「おま、地味に痛いんだぞ」
「はっ、鍛え足りないようだな」
 もう一度と蹴り飛ばそうとしたところで避けられた。
「今すぐ着替えます」
 服を身に着けて馬の元へと向かう。
 馬に跨ると二人は並んで馬を走らせた。

 二人が戻ったのは門を閉じようとしていた時で、どうにか中へ入ることが出来た。
 さすがに馬を飛ばしてきたので疲れた。そんな二人を周が笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりなさい。直ぐに食事の準備をしますね」
 座って待っていてと茶を煎れてくれる。
「良くできた息子だねぇ」
「俺の息子だもの当たり前だ」
 直ぐに食べれるようにと準備をして待っていてくれたようで、料理がテーブルの上に並べられる。
「頂きます」
「ん、うまい」
「ホッとするな」
「デート、どうでしたか?」
「まぁ、久しぶりに馬で遠出したしな、そこそこ楽しかったかな」
「そうでしたか」
 昼に出されたお弁当が上手かったこと、湖で魚を捕まえた事など聞かせて一緒に笑いあう。
「実はグリスはシュウが仕留めたんだ」
 と狩りに一緒に行ったことを聞いて、良くやったと褒める。
「クレイグさんが一緒でしたので」
 今度はリカルドに弓を教えてもらうのだという周に、クレイグは羨ましそうな顔をする。
 ムッとしながらクレイグを見れば、宗の視線に気が付いて話題を変える。
「今度は三人で行こうな」
「はい! 父さん、俺にも見事なモリ裁きを見せてください」
「馬鹿か。そんなの見ても楽しくないぞ。それよりも食事が済んだら、周、少し時間をくれ」
「はい、わかりました」
 それからは食事に集中し、料理は全て胃袋の中へと納まった。
 片づけを終えて周が戻ってきた所で、待っていろと必要な物を取りに向かう。
 寝室にしまっておいた大切な物。それを手にしてぎゅっと抱きしめる。
「朱玉、とうとうこれをクレイグに渡す時が来たぞ」
 形見としてサイドテーブルには朱玉が大切にしていたブレスレットが置かれている。
 これは宗に持っていて欲しいと手渡された物だった。
 それをポケットに入れると二人のいる所へと戻る。
「それは……?」
 一つはクレイグが彼に贈った品が入った箱、そして皮の袋に何かがはいっている。
 それをテーブルの上に置いた。
「クレイグ、お前から先に」
 箱を手渡すと、それを受け取ったクレイグが中からカフスを取り出す。
「ソウ、俺の伴侶としてこれから先も傍にいてください」
 耳に飾り、そしてキスをする。
「あぁ。やっとお前を手に入れたんだ。誰にもやらん」
 愛してる、と、皮の袋から銀の剣をとりだし、そして手紙と共に手渡した。
「剣と、手紙?」
 ソウからかと聞かれて、違うと首を横に振る。
 封を開いて中身を取り出して読み始めたクレイグが、あ、と小さく声を上げる。
「ソウ、これ」
「朱玉から頼まれていたんだ」
 内容は秘密だと、彼女が唇に人差し指を当てた。その姿を思い出して、ふっと笑みを浮かべる。
 手紙を読み終えたクレイグが宗に手紙を渡す。
「この手紙はクレイグ宛だ。俺が読むわけには……」
「シュギョクの為にも読んで欲しい」
 それを受け取り読み始める。
 宗と朱玉が婚姻した理由、クレイグに対する想いと交わした約束の事、そして剣を二人で選んだこと、最後に、宗に対する気持ち、そして、幸せにしてやって欲しいと、そう書いてあった。
「朱玉……ッ」
 家族となったあの日から、宗へ対する気持ちの方が大きくなり、クレイグは憧れの人とかわった。
 幸せだった。宗と周と共に暮らした日々が、と、そう手紙には書いてあった。
「俺も、君が大切だった」
 同じだ、と、手紙を胸に抱きしめる。
「大切にする。ソウも、シュギョクの想いも」
 剣へ、宗の唇へと軽く触れる位のキスをする。
「クレイグ」
「愛してる」
 と、今度は深くキスをする。
「おめでとうございます。父さん、クレイグさん」
「ありがとう、シュウ」
 心から嬉しそうな笑顔を見せた。
「そうだ。周、悪いがクレイグの家へ行ってくれるか?」
 それだけで何をするか察した周は、素直にわかりましたとクレイグから鍵を受け取る。
「お二人とも、程ほどになさってくださいね」
「はは。流石に若い頃のようには無理だわな」
「ほう、若い頃はそんなにご盛んだったのか、ん? そういえば、キスの件もまだ聞いてなかったな」
 ぎゅっと耳を摘ままれて引っ張られる。
「そ、そんな、お話するような程では……」
「ふふ、それでは俺はクレイグさんの家に向かいますから。お二人とも、お風呂に入ってゆっくりしていてください」
「お、風呂! うん、そうだな。ソウ、先にはいれ」
「解った。じゃぁ、その後にベッドの上でじっくりと話を聞こうか」
「勘弁してくれよぉ」
 そんな二人の姿に、周が「喧嘩しちゃ駄目ですよ」と笑みを浮かべながら声をかけた。

 今まで宗の耳に無かったシルバーのカフス。そして、昨夜の情事の痕が残る身体を晒す。
 あの後、クレイグは容赦なかった。
 胸をしつこく吸われたせいで服がこすれていたいし、休む間もなく後ろを突かれて腰がだるい。
 それでも、彼と一つになれたことが嬉しという気持ちが勝っているので、身体が辛いのも我慢できる。
「おめでとうございます」
 二人がそういう関係になったのだと理解したまわりの者が、次々とお祝いの言葉を掛けてくる。
「ふ、お前等は若い奴等みたいな反応は見せないな」
 若い騎士達は目を反らして恥ずかしそうにしている。その姿が初々しい。
「そりゃ、いつかはそうなると思ってましたし。ま、ちょっとヤバいとは思ってますよ。色気、半端ないし」
「そうそう。半端ないっす」
 上半身裸の姿を見て、クレイグが真っ赤になりながら宗を自分の背中に隠す。
「こら、お前等、見るんじゃない」
「クレイグさん、可愛すぎます、その反応」
「昨日もそんなだったんですかぁ」
 散々からかわれて、剣を抜くクレイグに、まわりは一目散に散らばった。
「あいつら」
「くく、あはははっ」
「ソウ!!」
 楽しそうな笑い声に、クレイグはしゃがみ込んで手で顔を覆った。