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友の幸せ、俺の幸せ

 部屋デート、すごく楽しかった。
 俺の作った料理をおいしそうに食べてくれた。その姿を見た時、料理が得意で良かったって思った。
 それから、一緒にたわいのない話をして笑いあったり、優の色んな表情を見る事ができて嬉しかったし。まぁ、キスより先に進めたならばもっと最高けどな。
 多くを望んで優に二度と家に来たくないなんて思われたら嫌なので、まぁ、エッチな事はもう少し我慢だな、なんてぼんやりと思っていたら、ナオがおはようと俺に声を掛けてくる。
 いつもは俺より先に来ているのに、珍しいこともあったものだ。しかも、いつもよりも雰囲気が柔らいような……?
「あの、尚明君。休み中に何か良い事でもあったのでしょうか?」
 ナオの身体がぴくっと震え、あきらかに動揺しているように見える。
「な、何って?」
 動きすらぎこちない。
「ナオ、何があったかお父さんに話しなさいっ」
 と肩を掴んで揺さぶれば、目が泳ぎ始める。お父さんの部分につっこまねぇあたり相当だな、こりゃ。
 目元をうっすらと赤く染めながら言いよどむ。
 うわ、絶対に聞きたい。ナオがこんな反応を見せる出来事を。
「ナオ」
「……実は」
 俺の耳元に唇を寄せ。
「小崎先輩と、お付き合いすることになった」
 と告げる。
「マジかっ!」
 思わず大きな声が出てしまい、クラスメイトが一斉に俺を見る。
「ちょ、勇人っ!!」
 慌てて口を押え、さらにこそこそと話を続ける。
「プラネタリウムに行って、それから……」
 頬を染めて唇に手をそえ、妙に色っぽい表情を見せるナオ。
 そして。
「キスしたんだ」
 と恥ずかしそうに言い、俺は俺は驚いておもわず勢いよく立ちあがってしまい、椅子が倒れて大きな音を立てる。
 ざわついていた教室が一気に静まり、数人のクラスメイトが固まっていた。
 多分ナオが俺を怒らせたのだと勘違いしたのだろう。
「チッ」
 俺は舌打ちをして周りを一瞥すると椅子を直して座る。
「勇人」
 そんな俺をナオが咎めるように名を呼ぶがそれを無視し、良かったなと話の続きをする。
 ナオが桂司さんを好きな事は知っていたし、桂司さんがナオの事を気にしていた事も知っている。
 それだけに二人が結ばれてすごく嬉しい。
「あぁ」
 心から嬉しいと、ナオの表情は物語っていた。

 あぁ、はやく恭介サンと優に報告したい。好きな人達の幸せを、好きな人と分かち合いたいから。
 昼休みになると俺は速攻で弁当を平らげて保健室へと向かう。
 ウキウキとする俺に、つい目が合ってしまった先生がそっと視線をそらす。
 いつもならムカつく所だが、今日は幸せな気分だから別に良い。
 保健室に向かいながら優に昼休み生徒会室で待つとメールを送信し、スマホをポケットに突っ込む。
 目的の場所に着いたのでドアを開いて中へ入れば机に向かっていた恭介サンが気が付いてこちらへと向く。
「なんだ、勇人か」
 恭介サンの顔を見た途端に顔がにやついてしまい、気持ち悪いと言われた。
 丸椅子に前のめりに座り。
「恭介サン、ナオが桂司さんと付き合う事になったって」
 と告げれば、そうかそうかと恭介サンが顔を綻ばせる。その表情をみていたら自分の事のように嬉しくなってきた。
「恭介サンなら一緒に喜んでくれると思ってた」
「あったりまえだろ。俺の可愛い弟分だもんよ、お前等は」
 そう頭を乱暴に撫でる恭介に俺はニカっと笑った。
 思った通りの反応に、俺は気分が良いまま優の事を探しに行く。
 今日は澤木さんは昼休みは図書委員で、渡部さんはファンの子にお昼を誘われていない筈だ。
 ということは桂司さんの所か屋上だろうと目星をつけて、まずは居る可能性が高い屋上へと向かう。

 優を見つけるなり、気持ちが高ぶりすぎて抱きしめながら背中を叩く。
「うわぁ、ちょっと!」
 何が何だかわからない様子で、優は驚きながら俺を引き離す。
 周りで俺の行為を見ていた奴らが驚きながらこちらを見ていて、俺は優を連れて人目のない場所へと向かう。
「で、一体どうしたの?」
「実は、さ」
 俺はナオと桂司さんの事を優に話聞かせると、驚いた顔をした後にふっと笑みを見せる。
「吾妻って優しいね」
 心から喜んでいるのが解るよと、優が俺の頭を撫でて、
「教えてくれてありがとうね」
 と微笑む。
 俺が話をし終えた後、すごく嬉しそうな顔をしている優の、そのやさしさに気持ちが高ぶってしまい、
「やっぱ、好きだ」
 ぎゅっと両手を掴んで顔を近づける。
 互いの唇がくっつくまでまであと数センチ。
 それを拒否するようにきつく唇を結ぶ優。あぁ、駄目かと、俺は息をはいて肩を落とす。
 優に目を反らされて俺は手を離し距離をとる。このまま気まずくなるのは嫌だから別の話題を振る。
「あ、そうだ。今度さ、ナオ達とWデートしようぜ」
 優も俺と同じ気持ちだったようで、その話題にのっかってくれる。
「Wデート? 良いけど、デートじゃなくて友達として遊びに行くならね」
 そう言われて俺は「そこはデートでいいじゃん」と大袈裟にガッカリとして見せれば、
「ふふ、解った。じゃぁ、一応Wデートってことにしておいてあげる」
 と、しょうがないなって感じで俺の肩を叩く。
「ちぇっ、優にゃ敵わねぇや」
 そう、情けない調子で言葉を返せば、優は俺の頭を撫でくる。
 たまにこうやって弟のような扱いをされるのだが、それは優が俺に心を許しはじめているからって思っていいよな?
 ナオと桂司さんのような関係になるのはま無理そうだけど、いつか俺もナオや恭介サンに報告してえよ。
 俺達、恋人同士になりましたって。