メロンパンとヤキモチを妬く彼
大池にヤキモチを妬いてもらえるなんて思わなかった。
嬉しくてつい顔がにやけてしまうのはしょうがないと思う。
「先輩、やけに嬉しそうですね」
落ち着きを取り戻した大池がじとっと江藤を見る。
「そりゃ、ね。大池がヤキモチを妬いたお祝いに赤飯を炊きたい気分だよ」
なんて事をいったら、大池が嫌そうな顔を浮かべた。
「赤飯は好きですが、そんなお祝いはいりません!!」
「はいはい、わかりましたよ」
江藤はメロンパンを手に取って大池の口元に押し付ければ、それをひと齧りした大池の表情がみるみるうちに蕩けだす。
「んっ、美味しいです!」
二口、三口と夢中でパンを食べ始める大池に、
「当たり前だろ。お前の為に作ったんだから。言っておくけどあいつ等の方がオマケなんだからな」
ピシッとそのおでこを指ではじけば、半分くらいになったパンを両手で持ちながら「すみません」と項垂れる。
大池がやきもちを妬いていた相手は江藤の妹と友達だと言う事を伝えて誤解がとけた後だからだ。
もう気にするなと指ではじいた箇所を撫でてやれば、大池がそろっと顔を上げた。
「江藤先輩」
まるで怒られたワンコのよう。耳と尻尾があったら間違いなく垂れ下がっている事だろう。
このまま抱きしめて甘やかしたいと、そんな思いに囚われ。
「なぁ、泊まっていかないか」
パンを手にする大池の手を撫でながら誘うようにそう言えば、その意味を悟ったようで顔を赤く染めてぎこちなく頷く。
「じゃぁ、パン食ったら一緒に風呂に入ろう?」
と食べかけのパンを江藤は自分の口へと運び、さらにその残りを大池の口元に運ぶ。
ごくんと喉が鳴るのはパンを飲み込んだからなのか、はたまた江藤の誘いに生唾を飲み込んだのか。
バスルームのシャワーの音と共に聞こえるのは江藤の甘い声だ。
「ん、もう俺はいいからっ」
泡のついた大池の手のひらが体を滑り刺激を与えていく。
背中から腕を回して大池の体を洗っていた筈なのに、いつの間にか自分が洗われていた。
それも胸と下は特に丁寧に洗われて、感じない訳がない。
「だめです。下なんてこんなに濡らして。もっときれいにしましょうね」
予想外だった。
大池の表情が豊かになるのも饒舌になるのも、そしてエロくなる事も。
「俺のも濡れちゃったから一緒に洗っていいですか?」
ボディソープを垂らされて泡立てはじめる。
「ん、あぁぁっ」
「えとうせんぱい」
甘えるように名前を呼び、蕩けそうな顔をしながら互いのモノを擦り合わせて欲を放ちあう。
ふぅと息をはき、江藤を体を抱きしめる大池だが、まだその眼には欲を含んでおり、腰のあたりを撫でる手は下へと伸びていく。
「大池、続きはベッドで、な?」
頬を包み込んで言えば、ハイと返事をした後に何か言いたげに口を開きかけたが、結局は何も言わずに口をつぐむ。
「大池?」
「あの、ですね。俺が下で構いません、から」
江藤と付き合うようになり男同士でどうやるのかをネットで調べたといい、江藤に痛い思いをさせられないから自分が受け入れると言いだした。
「なんだ、考える事は一緒だな」
江藤も自分が受ける側でいいと思っていた。その為の準備も大池を思いながらしていた。
「江藤先輩も、ですか?」
「あぁ。だから俺にその役を譲れ」
と大池に軽く口づければ、ハイという返事と共に唇を貪られる。
体を拭くのも惜しいとばかりにそのままベッドへともつれ込む。
「大池、ローション」
いつかこの日の為にと用意しておいたモノを大池へと渡す。
後孔にひやりとしたものが垂らされて中に大池の指が入り込む。
「江藤先輩の中ってあったかくて柔らかい」
意外な感触だったのか、ほぅと息をはいて解していく。
江藤が指示し、指が二本、三本と増えていき、そろそろ大池のモノを飲み込めそうだ。
「そろそろ、お前のが欲しい」
大池のをかたくさせてそこへ自分の中へと飲み込んでいく。
「ん、指で中を感じたより、熱も柔らかさも感じますね」
たまりませんという大池に、
「だろう? お前を思いながら毎晩解していたんだぞ」
そう口角を上げて大池を見れば、真っ赤になりながら江藤を見ていた。
腰を動かしはじめれば「あっ」と声を上げて感じ入る。
「大池、キモチイイ?」
「はい、せんぱい。きもちいいです」
蕩けるような笑みを浮かべなが打ち付ける大池はすごく可愛い。
「あぁっ、ぎゅうぎゅうと締め付けられてたまらない」
中でさらに大きさを増したモノが江藤の良い所を激しく貫く。
「ん、ちょっと、おおいけ、あっ、おま、そこばかりっ」
「せんぱい、可愛い。ここが良いんですね」
親に褒められた子供のように可愛い顔をして。
そんな顔を見せるから余計に気持ちも昂る一方だ。
「ん、あぁぁっ、もう、でる」
「俺も、先輩、あ、あぁ」
びくっと互いに震え、江藤の中に熱いものが放たれる。
江藤が放ったモノが大池の腹を塗らし、それを掌で撫でて感触を確かめる大池はふわりと笑みを浮かべた。
「江藤先輩の中に俺のコレが入っているんですね」
ゆるりと腰が揺れ、放ったばかりで惚けていた江藤にピリッとした痺れをもたらす。
「お前が俺の中で放ったからな」
「もっと俺のでいっぱいにして良いですか?」
甘えるようにそんな事を耳元で囁かれて断れる訳がない。
「いいぞ」
おいでと足を開いてやれば、すぐに大池のモノが中へと入り込んできた。
「ん、おい、もっとゆっくり……、あ、ばか、そこは触らなくて、あぁん」
ゆっくりと自分の中を味わせようと思っていたのに、暴走した大池は止まらなかった。
「でも先輩の乳首も触ってほしいって言ってますよ?」
舌先でチロチロと弄られてたまらず嬌声をあげる。
「大池、やだ」
真っ赤に熟れはじめたその箇所は敏感に感じ、更に江藤を追いつめはじめる。
ちゅうぅと音たてて吸われ、もう片方も摘ままれてたまらずのけ反る。
「そこは、弱いからって、あ、あぁぁ――」
白濁をまき散らす江藤に、吸っていた乳首を離し。
「先に行っちゃ駄目ですってば」
と放ったばかりの箇所へと手を伸ばす。
「やだって、んっ、言った」
再び中を突かれて前を弄られる。
「まって、あぁぁっ」
今度は一緒に行きましょうねと、江藤を高ぶらせる大池。
それから抜かずに何発も中へと放ち、やっと大池が落ち着いたときには江藤はぐったりと枕に顔を埋めていた。
「江藤先輩、申し訳ありませんでした」
そんな江藤の姿を見た大池は、我に返った途端に真っ青になって何度も何度も謝った。
「いいから」
ぎゅっと頭を包み込むように抱きかかえれば、大池の髪が肌をくすぐる。
「お前が気持ちよくなれたなら、俺はそれで良いんだから」
な、と、頬を撫でればそのまま胸へと顔を埋めた。
何度も吸われて摘ままれて痛い筈の胸がぴくんと反応する。
「ん……」
また触ってほしいと主張をはじめる前に起きあがろうとするが、大池がそれを止めるように腕を回してくる。
「もう少しだけこうしていては駄目ですか?」
甘えるような目で見つめられ駄目だなんて言えるわけがない。
「わかった。もう少しだけ」
「ありがとうございます」
はにかむようなその表情にくらっときて目を閉じる。
江藤は可愛い年下の彼氏に甘い。
結局、その日は彼を抱きしめたまま眠りについた。
◇…◆…◇
テーブルの上に置かれたスマートフォンの、その画面に映し出された大池と信崎の画像。
「で、コイツは何なわけ?」
とんとんとテーブルを指で叩く江藤は口元には笑みを浮かべてはいるが目は笑っておらず。
昨日、喫茶店へと向かったのはこの写真の為だったことを思いだして真っ青になる。
「馴れ馴れしいとは思ったんですが……」
江藤の様子をうかがうように言う大池に、
「へぇ、そうなんだ」
そう冷たい声で言えば。
「申し訳ありませんでした」
と椅子から立ち上がり頭を下げる。
感謝や謝罪は45度でお辞儀、それは大池が新人の時に江藤が教えたことだ。
真面目に最敬礼する大池が愛おしくてたまらない。
「ぶはっ、くくく……」
腹を抱えて笑い始める江藤に大池はキョトンとした表情をする。
「なんだか浮気を問い詰めてる妻みてぇだよな、俺」
な、旦那様と肩を叩き。
「悪い、お前が好き好んでこんな写真を撮らせるわけないって解ってる。どうせ信崎の仕業だろ?」
悪ふざけすぎると言ってその写真を消去した。
「……先輩」
「なぁ、今度、俺の兄妹に会ってくれないか?」
写真じゃなくて実際に会わせたいんだと腕を絡める。
「俺を、ですか?」
「あぁ。大切な人達だから大池を紹介したいんだ」
これから先、共に歩んでいきたい人なのだから。
「はい。江藤先輩とお付き合いさせて頂いていると、ご家族にちゃんとご挨拶しませんとね」
頑張りますと気合を入れる大池。
そのズレた感覚もまた可愛いなと江藤は微笑んだ。