寂しがりやの君

その熱にこの身を溶かす

 秀次の身体は理想的だ。筋肉がよくついていて引きしまった体つきをしている。
 モテないと言っていたが、シャツの袖をまくり、引き締まった二の腕を見たら女子がカッコいいと思うのではないだろうか。しかも見た目も悪くないのだから。
「何?」
 服を脱ぎ始める秀次が、俺の視線に気が付き小首を傾げた。
「いや、綺麗な身体だなって」
「俺は総一さんのような身体つきになりたかった」
 そうすりゃ葉月きも勝てたよな、と、掌に拳を打ち付ける。
「喧嘩は駄目だぞ」
「やらねぇよ。バックに怖ぇ魔王様がいらっしゃるんだからな」
 魔王様? あぁ、神野くんの事か。
 本気で怖いのか自分の身を抱きしめて、そして、
「なぁ、総一さんもはやく脱げよ」
 と言われる。
「……ん?」
「は、約束しただろ」
 何を言っているんだと、目を瞬かせる。
 絵を描く方を再開するわけじゃなくて、そっちを再開したいわけか。
「積極的だな」
 秀次の方から言いだすなんて、やばいな、顔がにやける。
「触られてばっかじゃなくて、俺だって触りてぇし」
「そうだったな」
 そう言った後で、本来の目的を思いだしたか、
「わりぃ、俺、モデルをしに来たのに」
 肩を落として項垂れた。
 秀次を描きたいのは本当だが、あわよくば、こういう展開になればいいとも思っていた。
 だから俺も秀次と同じ気持ちだと、肩に手を置いた。
「いや、俺も秀次と同じだから。それに絵の方は表に出すつもるのないものだから、ゆっくりと描かせてもらえたらそれで」
「そうか、表に出さないのか」
 どことなくその表情はホッとしていた。やはり誰かに見れるのは嫌だったのか。
 それでも俺の為に引き受けてくれたんだな。その優しさに胸が熱くなる。
「秀次は優しいな」
「え、なんだよいきなり」
「モデル」
「あのときは、総一さんが描ければそれでいいって思ったけれどさ、やっぱ、見られるの恥ずかしいしな」
 頬を指で掻きながら、照れくさそうにそう口にする。
「あぁ、誰にも見せるものか」
 あの身体も、こんな風に照れる姿も。
「それなら……」
 秀次が頬を真っ赤に染め、俺の服の袖を掴んで強請る。
「わかった」
 俺は服を脱ぐと、秀次の頬を手で挟み唇に触へと触れた。
「ん、総一さん」
「秀次、今度はお前のターンな」
「じゃぁ、総一さん、舌だして」
 舌をだすとそれに絡めて、唾液が顎を伝いながれおちる。
「ふ、ぬれちったな」
 ぺろりと舌が濡れた箇所を舐める。
「上も下も……」
 舌が鎖骨へ、そして胸へと触れた。
「ここも、濡らしていい?」
「すでに濡らしているじゃないか」
「ん、そうらった」
 口に含みながら話されるとヤバいな。
「ふ」
「かわいい、ツンとしちゃって」
 かたくなり突起している。そこを真っ赤な舌がゆるりと舐めた。
「ん、しゅうじ」
「総一さん、ほんと、ここ弱ぇのな」
 弱点みっけ、と、ちゅぱちゅぱと音をたてなが弄る。ワザとだろ、顔が笑ってる。
「秀次、他の子にも、そんな事をしてたのか」
「する訳ねぇだろ。わざと音をたててんのっ」
 俺が恥ずかしがると思ってのことか? あぁ、もう、可愛い事を。
「へへ、腹筋もすげぇのな」
 胸の次は腹筋。割れた溝の所を舐められる。
「くすぐったい」
 笑い声をあげる俺を見て、秀次も楽しそうな顔をしている。
「えぇ、じゃぁ、総一さんの、立派なコレは?」
 と根元の当たりにキスをする。
「秀次、そこは無理しなくていい」
 口でしてくれるのは嬉しいが、平気なのか。
 秀次を見れば、熱のこもった目で俺を見ていた。
「大丈夫。して、いいよな?」
 まるで頭を撫でるように、俺のを撫でる。まるで可愛がっているかのようだ。
「たのむ」
「んっ」
 舌の感触。本当に、俺のを舐めているのか。
 すごい光景だ。たどたどしいけれど、それがまた俺を煽る。
「きもちい?」
 気持ちいいが、きもちいになるのも可愛い。
「ん、良いぞ」
 舌が先っぽから根元、裏筋と懸命に舐めていく。その姿と舌の感触に俺のモノが大きくなる。
「ふ、おっきくなった」
 ニマっと笑うと大きく口を開き俺のを咥えた。
「はっ」
 ちゅうちゅうと音を立てて吸われて、身体が昂っていく。
 秀次の頭を押さえつけて、もっと奥の方まで突っ込みたい。手が疼く。
 だが、ここまでしてくれた秀次に苦しい思いはさせられない。
「ん……、秀次、もういいよ」
「やっぱ、物足りねぇ?」
 しゅんと落ち込む姿は叱られたワンコのように見える。
「違う。そろそろイきそうだから、太腿をかして」
「あ、あぁ。そういうことね」
 秀次がうつ伏せに寝転がると四つん這いになり足を開いた。
「いいぜ」
 良い眺めだな。
 腰を掴んで持ち上げると、俺のを太腿の間に挟んだ。
「へへ、太腿にぬるぬるで生ぬるい感触」
 何がスイッチが入ってしまったのか、ケタケタと笑い、足を動かす。
「こら、俺だけが良くて、一緒に気持ち良くなれない」
「じゃぁ、突いてよ、総一さん」
「あぁ。俺のでイかせてやる」
 俺ので刺激された秀次のモノが蜜を垂れ流す。
「はぁ、俺の、総一さんのかたくておっきいのに犯されてる」
「喜んで涎を垂らしてるな」
「そういう総一さんもじゃん」
 腰を揺らし、互いのをこすりあわせると、張りつめたものが解き放たれる。
 秀次と俺の欲が太腿を塗らし、たらりと下へ流れ落ちる。
「べたべたする」
「ん……」
 寝転がる秀次の隣に横になり、その身をひきよせる。
「総一さん、今度するときはさ、後ろでイかせてやれるように、頑張るから」
「秀次……」
 あぁ、もう、素でそんな事を言うんだからな。
「総一さん?」
 どうしたと顔を覗き込む。
「いや、幸せだなって」
「総一さんと一緒だと、いつでも俺は幸せだ」
 秀次よ、俺をどれだけ骨抜きにする気だ。
「あぁ、もう。だめだ」
 愛おしすぎる。秀次の頬に自分の頬をくっつけてぐりぐりと動かすと、
「総一さん、うざい」
 掌で頬を押されてしまうが、そのかわりに腕を回して頭を抱きしめられて、それが秀次の愛情に包み込まれているかのようで、ウットリしながら目を閉じた。

 秀次がばぁちゃんにプレゼントしてくれたのはスカーフだった。
 淡い色で、とてもばぁちゃんに似合っている。
「勇さんに見せたら、似合うって言ってくれたの」
 と頬を染める。いつまでも新婚夫婦のように仲がいいんだ、ばぁちゃんとじいちゃんは。
「美代子さん、可愛い」
 でれっとしている恋人に、苦笑いする。
「まぁ、嬉しいわ」
 手を合わせて乙女のように喜ぶ。
「写真撮っていいっすか?」
「良いわね。折角だから三人で、ね?」
 ばぁちゃんを挟みスマホで写真を撮る。
 笑顔の二人は可愛くていい一枚になった。
「大切に使わせてもらうわね」
「はい」
 ほんわかとした空気になる。いいな、この雰囲気は。
「秀ちゃんから貰ったお菓子を皆で食べましょ」
 用意するわねと台所にいってしまったばぁちゃんを、秀次がニコニコしながら眺めている。
「秀次」
「美代子さんに似合っていてよかった」
「ありがとう。愛してる」
「な、いきなりなんだよ。……俺もだってぇの」
 照れてる。
 あらたまっていう言葉に絶大な効果があろうとは。
「二人ともいらっしゃいな」
 ばぁちゃんの呼び声に二人そろって返事をし、顔を見合わせて微笑んだ。