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恋人同士の時間

 ――全部カタがついたら、もっとすげぇ事をしようぜ。
 そう、吾妻に言われた。
 俺はちゃんと意味が解っていて、楽しみにしているって答えたんだ。
 だから吾妻の家に遊びに行った時、「泊まっていけよ」と言われて、素直に頷いた。
「優、解ってんのか?」
「解ってる。俺、楽しみにしているって言ったじゃない」
 そう、両手で吾妻の頬を包み込むと、その手を掴まれ。
「やっべぇ。なぁ、このまま優の事、押し倒していい?」
 と吾妻が熱っぽく俺を見つめる。でも、お風呂に入ってからが良い。だって好きな人に抱かれるのに、汚い体のままじゃ嫌だ。
「お風呂に入ってからじゃ、駄目?」
 一緒に入ろうよってぎゅっと服の袖を掴んで照れながら言えば、吾妻の顔が一気に赤く染まる。
「お、おう」
 ぎこちない返事と共に手を握りしめられてバスルームに向かう。
 服を脱ぎ捨てた俺の貧弱な体を舐めるように見つめる吾妻に、俺は恥ずかしくなって手で覆い隠す。
「あんまり見ないでよ、恥ずかしいから。吾妻みたいに腹筋われてないし」
「恥ずかしい?」
 後から吾妻が俺を抱きしめて、脇腹のあたりを大きな手が撫でていく。
「肌は白くてきれいだし、こんなにもすべすべでさわり心地も良いのに」
 たらまない、と、耳元で囁かれる。
「そんなこと、あッ、や、吾妻」
 手が脇腹から上へと触れ、
「乳首もピンク色で可愛いな」
 と、指が胸の突起を掴み押しつぶされる。
「ん、だめ……、こういうのは後で」
 吾妻の手を何度か叩いてやめさせる。
「はやく食いてぇよ、優」
「わかってる。ベッドに行ったら待てはしないから。だから、ね」
 今はいい子にしててねと頬を撫でる。
「うう、わかった」
 それから体を洗いバスルームをでると吾妻がバスタオルで俺の身体ごと包んでくれる。
「優」
「わかったから、ちゃんと身体を拭いて」
「優」
 はやくとせかすように俺の名を呼ぶ吾妻に、
「もう、しょうがないな」
 と首に腕を回せば、そのまま抱き上げられた。
「ふふ、なんだかお姫様みたいだね、俺」
「じゃぁ俺は王子様だな」
 かっこつけた表情を浮かべてみせる。
 元々、吾妻は男前なのだ。しかも出会ったころより角が取れて丸くなった事により、あきらかに男前度が増した。
 でも王子様というより騎士様って感じ。だけど俺はわざと茶化すように、
「うんん。お姫様を守る忠犬」
 そう口にすれば、犬かよと苦笑いを浮かべてワンと鳴いて、俺の事をベッドの上にそっと下ろした。
「可愛い忠犬にご褒美頂戴」
 と口づけされて、それを俺は受け入れる。
「ん……」
「ずっとこうしたいって思ってた」
 吾妻の掌が俺の肌を撫でていく。
「ん、そうだったね」
「駄目って言われる度、辛かったんだぜ?」
 首筋に鎖骨にへと口づけが落とされピリッとした痛みを感じた。
「吾妻、何?」
「俺のモンって証をね……」
 キスマーク。
 俺も吾妻につけたいなと、身を起こして首へとかぶりつく。
「おわっ、ちょ、んっ、こそばゆい」
 吾妻の真似をしてちゅっと吸い上げてみたけれど上手く痕が付かなくて、何度も吸い上げていたら身体を引き離された。
「優、こうやるんだよ」
 と俺の腕を掴んで痕をつける吾妻。
 同じように吾妻の鎖骨のあたりに吸い付けば、今度はうまく痕を残すことが出来た。
「吾妻、上手くできた」
 満足げに笑う俺に、吾妻が唇を重ねてそのまま布団に組み敷かれた。
「ん……、はぁ、あずま」
「可愛すぎんだよ」
 肌を撫でられて身体が火照る。
 舌先で押しつぶして口に含んで吸われ、身体を反らせば、余計、吾妻の口で吸われている箇所が感じてしまい、びくびくと小刻みにふるえてしまう。下半身のモノは先走りで濡れてたちあがっていた。
 そこに手を伸ばした吾妻がそこをこすり、ぬちゃぬちゃといやらしい水音がする。
「あ、あぁぁ」
「可愛いな、お前も、ここも」
「やっ」
 優しい。声も顔も手付きも。
 荒々しいイメージなのに、俺を大切にしてくれているんだなって、そう思うと余計に感じてしまって、吾妻の手に包まれイってしまった。
「俺の手の中ではじめてイった優の」
 と手を広げてどろりとしたモノを俺に見せる。
「な、そんなもの見せないでよ」
 恥ずかしいと手で顔を隠そうとするが、ドロリと濃いそれを愛おしそうに見つめて舌が絡め取り、思わず凝視してしまった。
「え、ちょっと、吾妻ッ」
 まさか舐めるなんて。吐きだせと、ベッドの棚の上に置かれたティッシュを取ろうと手を伸ばすが掴まれてしまう。
「大丈夫。それよりも、今度は口の中に直接頂戴」
「何を言って、くっ、あぁぁ、ん」
 舌が放ったばかりの箇所を舐め、ゆっくりと裏筋を舐めていく。
「や、そんな」
 焦らされている。俺が刺激を欲しがるように、わざと見せつけながらそうしているんだ。
 なんていじわるなの。でも、俺はもっと強い刺激が欲しくて吾妻の名を呼んで強請る。
「どうした?」
 なんて言って。本当は解ってるくせに。
 俺を見ながら目を細め。指で先の方を弄りながら、舌が根を舐める。
「ん、焦らしちゃ、イヤ」
 その言葉に弓なりに目を細めて、ひくひくとする俺のモノをぱくりと咥えた。
「ひぅッ」
 深くまで咥え込んで吸い上げて、嬉しそうに俺のモノをしゃぶる吾妻に、高揚し、一気に高みに上り詰めると、欲を口の中へと放った。
「ごちそーさん」
 と自分の唇を舐める吾妻。
「……飲んだの?」
 舐めるだけでも驚いたのに、まさか飲んじゃうなんて。
 吾妻は当然だろうといわんばかりの顔をしていた。
「もう。お腹が痛くなっても知らないからね」
「平気だよ、優のだもの」
 その根拠は解らないけれど、吾妻ならそういうならと身体に縋りつく。
「今度は優の番ね」
 と、お尻の窪みを撫でられ、
「ひゃんッ」
 くすぐったくてのけ反る俺に、吾妻が口角を上げてベッドから降りると袋の中なら何かを取り出した。
「用意しておいたの?」
「あぁ」
 俺を四つん這いにさせてとろりとローションをお尻に垂らす。
 ぬるぬるとした感触と共に中へと指が入り込む。
「んッ、なんか、へんな感じ」
「まぁ、普段は出すトコだからな」
 と、中を解しながら何かを探すように蠢く指に、体がもぞもぞとする。
 そしてある箇所にかすめた時、びくんと身体は跳ねた。
「や、何、あッ、あん 」
 俺が反応を見せた事に、吾妻は唇を舐めてそこを弄り始める。
「は、うぅ、ん、あずまぁ」
「ここ、良いんだろ?」
 恭介サンが言ってた、と、吾妻は指をさらに増やしていく。
 そこを弄るたびに体がビクッってなるし、芯が甘く痺れてくる。
「良く解さないと痛い思いをするって、恭介サンが言ってたからよ」
 とさらにもう一本指が増える。
「ん……、聞いたの?」
「あぁ。優とするとき、何にもわかんねぇまましたくねぇなって。受け身の方は大変だからよ」
 そろそろと吾妻のモノがあてがわれ、後孔へと入り込む。
「くぅ」
 指とは比べ物にならない質量に、苦しくて息が詰まる。
「優、力を抜け」
 吾妻が俺の肩を撫でながら、大丈夫だからと言ってくれる。
「うん」
「あともう少し……、よし、入ったぜ」
 繋がったなと、嬉しそうに言う吾妻。俺も一つになれた事がすごく嬉しい。
「優しくできねぇかもしんねぇけど、良いか?」
「吾妻がしたいようにしていいから」
 俺は平気だよって言えば、辛かったら言ってくれよと俺の髪を撫でて激しく内側を突かれて。それがすごく気持ちよくて、もっと吾妻を感じたいって思った。
「あぁァッ、そこぉ」
 とろんとしながら吾妻を見れば、
「ふっ、しめつけ、たまんねぇな」
 ニィと口角をあげて俺を見る。
 カッコいい。
 胸が高鳴って、さらに吾妻のモノをしめつければ、艶っぽい目を俺に向けられて熱がさらに上がる。
「あずま……、もう」
「俺も」
 高まった欲を互いに放ちあい、ぬるりと白濁と共に中から吾妻のモノが抜かれていく。
「んぁ」
 小さく声をもらした俺に、吾妻が額に、頬にと口づけを落とす。
 それから吾妻が気だるい身体をベッドの上に投げ出すように仰向けに寝転び、その上に俺は甘える様に上半身をのせる。
「何、甘えたい気分なの?」
 そう言うと、嬉しそうに俺の髪を撫でる。
「うん。吾妻ともうちょっとこうしてたいかなって」
 抱き合った後の余韻もある。だけど、それ以上に吾妻の肌が気持ち良いから。
「おまえ、またそんな可愛い事を」
 と、顔を胸へと押し付けられて。俺は苦しいと腕を叩く。
「吾妻ッ」
「好きだ、優」
 間近に顔を近づけて、吾妻がそう言って俺に微笑む。
 あぁ、なんてキラキラしているんだろう。
「俺も、好きだよ」
 勇人。
 そう、名前で呼んでやれば、吾妻が不意打ちだと俺をベッドへと組み敷いた。
 あ、照れてる。
 目元が赤く染まっていて、俺はそんな吾妻を見ていたら胸がきゅんとなった。
「勇人を待たせた分、いっぱい愛させて」
 いいでしょう? と頬を撫でて唇へと指を這わせれば、唇へとキスの返事が返ってくる。
 それから俺達は再び体を重ね合って。腕の中へと抱かれなががら眠りに落ちた。