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愛してる

 キスをしながら服を脱がされる。
 たいして綺麗でもない平凡な男の身体を、渡部さんはじっくりと眺めている。
「そんなに見ないでください、萎えるだけですよ」
 と肌を隠すように手で覆うと、ベッドに組み敷かれ、耳を甘噛みされた。
「おやおや、愛しい人の身体を見て、興奮しますよ」
 そう囁かれて俺は照れながら渡部さんの背に腕を回す。
「本当ですか?」
「本当ですよ」
 いつもは和み系である渡部さんが、この時は雄の顔をしており、そのギャップがたまらない。
 胸が高鳴り、このまま蕩けてしまいそうになる。
「あぁ、そんな可愛い顔をされたら我慢できなくなりますよ」
 と歯列をなぞり舌が絡みつく。
「んぁっ」
 少し開かれた口から吐息が漏れる。
 キスがこんなにも気持ちがいいものだなんて。もっと欲しくて自分の方からも舌を絡めた。
 一旦、唇が離れ、
「私を求めてくれるのですか?」
 と嬉しそうにいう口を、再びキスでふさぐ。
「ん、はぁっ」
 くちゅっと小さく水音がする。
 涎が流れ落ちるのも気にならぬ程、キスに溺れていた。
「恭介くんの、たってますね」
 身を摺り寄せながらキスをしていたので互いの下半身が密着していた。
「そういう渡部さんも」
 互いのを擦り合わせれば、じんと身体の芯が痺れて甘く吐息をはきすてる。
「そうですね。では、別の所も頂いても?」
「はい。いっぱい、触ってください」
 首に鎖骨へとキスの雨をふらせ、突起した乳首を舌で敏感な部分をもてあそぶかのように弄る。
 その度、俺は刺激と快楽を垣間みて、何度も何度もあの人を呼ぶけど執拗にソレは繰り返される。
 喘ぐ声も動きによって激しくなったり弱くなったり、甘えたり、悲鳴だったり。俺のモノをしゃぶり、後ろへはいりこんだモノは何度も中を突き上げて、熱くてトロリとしたモノを中へと注いだ。
 もっと、もっと欲しいと、俺は懇願し続ける。
「あ、んぁっ、わたべ、さん……」
 背中に爪を立てる。それに満足そうに渡部さんは微笑む。
「もっと欲しいですか? それならば、私の下の名前で呼んでくれませんか」
 誘い込むように甘くささやく。
 その声に身を震わせながら俺は声を絞り出すように名前を言う。
「まさしさん」
「はい、よくできました」
 そういうと膝の上に座らせられて、軽く触れるだけのキスをする。俺はそれだけじゃ足りないから腕を回してこちらから舌を絡ませる。
「明日……、辛く、ん、なりますよ」
「ん、いい、です。しあわせ、あぁっ」
 話しながらキスをして、だらだらと口から透明なものがたれおちる。
 前も後ろもいやらしい。ぴちゃぴちゃ、ぬちゃぬちゃと音を立てる。
「あは、ぬるぬるですね」
 まるでお酒に酔ったかのように、頭の中がぼっとする。
「えぇ。でも、こういう濡れ方は大歓迎です」
 と優しく微笑む渡部さん。
「それに乱れた恭介君は、いつもと違う魅力があって素敵ですよ」
 そういう渡部さんこそ、意外と助平だったとことに驚いた。
「さ、見せてくださいね。貴方が私ので乱れるところを」
 恭介君から入れてくださいと、渡部さんがベッドに仰向けに寝そべる。
 騎乗位となり、たちあがったモノを後ろへとあてがい、そして中へといれた。
「はぁっ、ふかいぃ」
 身体が刺激でのけ反る。
「えぇ、深くまでつながりましたね。さ、恭介君」
 気持ち良くさせてください、そういってニッコリと笑う。
 意地悪。
 だけど、求められるのが嬉しい。
「気持ち良くなって、ください」
 そう微笑み返して腰を揺らし始めた。
 

 少しの間、寝てしまっていたようだ。目が覚めた時には渡部さんが隣におらず、もしかしたら汗でベトベトな身体を洗うためにシャワーを浴びにいったのかもしれない。
 ベッドから思い身体を起こす。俺の身体はシャワーに行く前に拭いてくれたのだろう。さっぱりとしていた。
 俺は立ち上がるとバスルームへと向かう。
「渡部さん」
 ガラス扉が細く開き、渡部さんが顔半分のぞかせる。
「中にいらっしゃいませんか?」
 と扉が開く。
「失礼します」
 中へと入るときに足がガクッと崩れ、あわてて渡部さんが腕を引く。力の入らない身体は簡単に胸の中へと納まった。
「すみません」
 抱きとめてもらっていないとこのままずるずると崩れてしまいそうだ。
「やりすぎちゃいましたね」
「俺が貴方に欲しいって言ったんですから、だから……」
「貴方は本当に可愛い人ですね、恭介くん」
 甘い声で下の名前をり呼ばれて、再び俺の中で欲が生まれてくる。
 シャワーを浴びながら甘いキス。
 太腿に伸びた手が愛撫をしはじめる。
「ん、渡部さん」
「私の注いだモノをこんなに垂らして」
 厭らしいですね、と、指が後ろの孔へと入り込む。
「ひゃ、まって、あぁっ」
「ゴムなしでしてしまいましたからね。掻き出さないと駄目ですよ」
 と耳元で囁いて、俺の弱い所をカリカリと弄られる。
「んぁ、そんなにされたら、たっちゃいます」
「良いですよ。これが終わったら一緒にぬきましょうね」
 渡部さん、もしかして絶倫なの?
 時間をかけて後ろをかきだしたあとに素股でいかされた。
 もう、駄目と向い合せにもたれれば、その身を抱きしめて熱いシャワーをかけて洗ってくれた。
 身体を拭き、下着をつけずにパジャマを着せられる。
 少し大きめのパジャマから、ほんのりと柔軟剤の香りがした。
「さ、もう少し休みましょうね」
 とベッドに連れて行かれ、渡部さんの腕の中で眠りについた。

 ぼんやりと目を開く。そうだ、昨日は渡部さんと……。
 身体がダル重く、行為を思いださせて顔が熱くなってくる。
 しばらくは布団の中でもだもだとしていたが、このままこうしている訳にもいかない。
 渡部さんの姿はすでになく、ベッドから起き上がると、畳んで置いておいてくれた着替えを身に着ける。
 リビングに向かう途中、良いにおいがしてくて、渡部さんはキッチンにいるのだろうと覗いてみれば、料理中の後姿が見える。
「おはようございます、渡部さん」
 隣に並び立つと、こちらへと向き、
「おはようございます恭介君」
 と軽く触れるくらいのキスをする。
 なんて甘い挨拶なんだろう。
 照れる俺に、渡部さんは笑みを浮かべて、
 そういうと椅子を引いた。そこへと腰を下ろして渡部さんを見る。
 真っ白なシャツの袖を捲り、黒いエプロンを身に着けた姿を惚れ惚れと眺めていたら、
「好きな人に見つめられながら料理をするのも、良いものですね」
 と目を細めて笑う。
「渡部さんっ」
 俺は熱くなった顔を手で覆うと、この幸福感を噛みしめた。