甘党な男達と先輩後輩
時間があると真野は喫茶店へ顔を見せるようになった。
大池にバレると嫌な顔をされるらしく、ここに来るのは内緒らしい。
真野が来るようになってから菓子パンと調理パンの二種類用意するようになった。
「すごくふわふわで柔らかい白いパンですね。挟んであるピーナツ味のクリームもすごくおいしいです」
「店の常連さんの中に落花生を作ってる方がいてな」
はねだしだけど使ってよと譲り受けた落花生をピーナツバターにする。
それを生クリームと混ぜ合わせてパンにはさんだ。
「良い落花生だからな。毎年楽しみなんだよね」
それも今まで一人でしていた殻むきを大池と一緒にしたり、出来上がったピーナツバターを使って料理して大池に美味しいって言ってもらえたり。
思いだすとつい口元が緩んでしまう。そんな江藤に、
「料理上手な恋人さんがいる大池さんが羨ましいです」
とパンを一口食べて美味しいと顔を綻ばせる真野。
恋人だということをどうして知っているのだろうと驚いて思わず聞いてしまう。
「えぇ? 大池さんの態度を見ていたらわかりますって」
江藤さんだってわかりやすいですよと微笑む真野に、そうなのかとがっくりと肩を落とす。
「俺もお二人のように素敵な恋愛がしたいです」
「へぇ、真野、好きな奴でもいるのか」
と二人の会話に割り込んでくる、良く知ったその声の主にいらっしゃいと江藤が声を掛ける。
「よう」
軽く挨拶をすませ真野の隣へと腰を下ろせば、
「いけない、もう帰らないと」
と席を立ち、止める間もなく失礼しますと店を後にしてしまう。
あまりにあからさますぎる真野の態度に、信崎に何をやったんだよと尋ねる。
信崎は付き合いやすく面倒見も良い男だが、それがあだとなってうざがられてしまったのだろうか。
「アイツが入りたての頃にな、部下の一人が自分のミスを他人のせいにした事があってそれを叱ったんだけど、それが相当怖かったのかそれ以来あんな感じで」
「あぁ、その話は大池に聞いたぞ。ガツンと言ってやった信崎に胸がスッとしたって」
「はは。まぁ、そう思ってくれる奴ばかりじゃないって事だよ」
ま、しょうがないよと珈琲を口にする信崎に、
「よし、こういう時はとことん飲もう!」
と仕事が終わったら家に来るように言えば、いいねぇと誘いにのってくる。
「じゃぁ、大池にもメールしておくから」
「あぁ。仕事の帰りに酒は買ってくるから」
「頼んだ」
信崎の為に久しぶりに好物を作ってやろう。今は同僚でもない自分は友達としてそんな事しかしてやれないから。
◇…◆…◇
いつも以上に酒を飲んだ信崎は酔い潰れてしまい、リビングで大きな鼾をかいて寝ている。
その頃、寝室では熱のこもった息遣いと共にベッドの軋む音が聞こえる。
「ん、んっ」
シーツを噛んで声を殺す江藤の後ろを激しく突き上げてくる。
信崎に気が付かれたらと思うのに、そんな状況がたまらなくぞくぞくする。
いつも以上に中の大池のモノを締め付けながら腰を揺らし続ける。
「ふぁ、せんぱい、しめつけがすごい」
ぶるっと震えて中に暖かいモノがはき出されて、とろりと太腿を伝い垂れていく。
「一緒にいけませんでしたね。じゃぁ、もう一回しましょうね」
腰を持ち上げられて動きはじめようとする大池に、
「待てって。一先ず大池の、抜いて?」
と手を合わせてお願いという。
抜かずに何発もやられたらこちらの身が持たないと言うか。
それでなくとも江藤の方が大池よりも二回ほど多く達していていたりする訳で。
渋りながらも一先ず後から大池のモノは抜いてくれたが、江藤の張りつめたモノから欲をはき出す為に手を伸ばしてくる。
「江藤先輩のを抜いたら終わりにしますね」
後ろから抱きしめるような形で大池の手が蜜で濡れた箇所をしごきはじめる。
「や、ん、んんっ」
自分でするよりも恋人の手でされる方が何倍にも感じてしまう。あたえられる快感に頭が真っ白になっていく。
「江藤先輩、きもちいいですか」
ふわっと耳元に息がかかってゾクゾクと体が震える。
「うん、きもちいい……」
そのまま首筋へと口づけを落としながらしごかれて、江藤のモノが絶頂をむかえてはじける。
がくがくと震えながら欲をはきだし、もう駄目とばかりに大池の方へと体を向けて顔を埋める。
「江藤先輩、今日もとっても可愛くて色っぽかったです」
髪を撫でながらそう言ってくれる恋人に、顔を上げてありがとうと微笑む。
心からそう思ってくれているのが伝わってくるから素直にうれしい。
「後始末はしておきますから。ゆっくりお休みください」
「うん、そうする」
大池の手が江藤の髪を撫でる。それが気持ちよくとウットリと目を閉じればすぐに眠りへと落ちていった。
朝、寝起きの悪い大池を起こしてから寝室を出てシャワーを浴び、朝食作りを始める。
それから十分後にまだ眠そうな大池が起きてきて、江藤に口づけをしてからバスルームへと向かう。
今だ寝たままの信崎もそろそろ起こさないといけない。
酒を飲んだ日の朝の信崎は大池並みに寝起きが悪い事は学生時代から知っている事だ。
「おい、信崎起きろ」
「う、ううん、もう少し……」
枕代りのクッションを抱きしめたまま起きようとしない信崎に、江藤はその体を激しく揺さぶる。
「今日、仕事だろっ!」
起きろと腕を引っ張ってやれば、そのまま抱きつかれて押し倒された。
「ちょっと信崎っ」
「信崎ぃ!!」
丁度バスルームから出てきた大池に見られ、怒りを含んだその声は低くいつもの丁寧な口調ではなかった。
「うわっ、すまん」
信崎があわてて身を起こすとシャワーを借りるとバスルームへと消えた。
「全く」
江藤にとっては唯のじゃれ合いでしかないが大池にとっては嫉妬の対象だ。
するりと大池の腕が江藤の腰へと周り後ろから抱きしめられて。
腰に回っていた腕が顎を捕らえて上向きにされて噛みつくようなキスをされる。
「んぁ……」
朝から下半身にくるような口づけは勘弁してほしい。
「せんぱいは、俺の」
ちゅっと音を立てながら口づけがどんどん下へとおりていき、鎖骨に鬱血を残して離れる。
「お前、どんだけ俺の体に痕を残すの好きなんだよ」
「これだけマーキングしておけば、貴方は既に誰かのモノだのだと解るでしょう?」
愛おしそうに痕を撫でられて、そろそろ本格的にやばくなりかけて大池の背中を押して席に座らせる。
真っ赤になった顔を隠すように大池から背を向ければ、シャワーを終えた信崎と視線が合って、にやにやとした表情を浮かべる。
余計に恥ずかしくなって、
「ほら、さっさと席に座って飯を食えっ」
と怒鳴り散らし、朝から食べるのにきついだろうと思われるほどの山盛りの飯を大池と信崎の前においてやった。