傍惚れ

 青木の配下として支えてやって欲しいと、榊に頼まれた時から彼のためだけに生きてきた。
 はじめのころは許せない気持ちもあった。が、元々、努力家である青木は庶民のために懸命に働いた。
 宗佑を信頼し、下の名前で呼ばれるようになり、そして素の自分を見せるようになった。
 そのころから宗佑は青木から目が離せなくなった。もっと彼のために役に立てるようにと頑張った。
 もっと頼れる男になりたいという気持ちがあり書物を読んでいたが、少し体を動かしたくなり竹刀を手に取ったのだが、青木が何故か裏門から入りこちらへとやってくる。
「宗佑!」
 まさかそこに宗佑が居るとは思わなかったようだ。驚いた表情を浮かべていた。
「おかえりなさいませ」
「あぁ、ただいま」
 いつも真っ直ぐに目を見て話す人なのに顔をそむけた。何か様子がおかしいと感じて、頭から足の先までみれば、髪は乱れ頬や足袋が汚れていた。
「一体、どうなされたのですか」
「捕り物があってな」
 非番でも月番の手伝いをすることがあるし、追っていた下手人のことを調べに町に出ることもある。
 風邪を引いたせいで青木の傍におれず、こんな格好をさせてしまったと悔しく思う。
「そうでしたか。怪我はしておりませんか?」
 そう手を伸ばしたところを青木に「さわるな」と払い落され、自分を守るように身を縮めた。
「青木様?」
 何かがおかしい。そう感じた宗佑がじっと見つめれば、それに気が付いて目をそらされた。
 青木に尋ねようとしたところで、
「私のことより自分のことを心配せよ。無理をせずに寝ていろと言っただろう。ほら、中へ戻れ」
 部屋を指さし中へと戻るように言われる。
「はい、わかりました」
 ここは一先ず部屋へと戻り、後でこっそりと様子を見に行こう。今は素直に青木の言葉にそうことにした。
 障子の襖を閉める時に少しだけ開けておき、そこから外の様子を見る。
 暫くこちらを見ていた青木は井戸のある方へと向かった。きっと、汚れた顔を洗うためだろう。
 なら、様子を見に行ってばれた時に手拭いを渡せば良いかと、ウメに用意してもらい井戸へと向かう。
 するとそこには一糸まとわぬ姿の青木がおり、井戸の水をかぶり、尻を突き出して腕を伸ばす。
 流石にそれで何がおきたのか気が付いた。
 裏門から入ってきたのも、着流しや髪が乱れて汚れていたのも、まさかそのせいなのか。
 一気に怒りがこみ上げる。誰が、青木にこんな真似をしたというのか。
 許せない。
 今までは嫌いな上役であったが、一緒にいるようになり、人となりを知ることができた。
 してしまったことを反省し、身を削り人に尽くす。そして、配下にも気を使い優しい上役となった。
 少し天然な所があることを知った時、可愛いなと思った。
 宗佑のために何かしようと一生懸命な姿を見ると、嬉しくて心が弾む。
 いつの間にか青木は宗佑にとって上役というだけではなく大切な存在へとかわった。
 ゆえに、彼の身体を味わった奴が許せない。
「誰にやられたんですか?」
 声をかければ、ギクッと身体を震わせて青木が振り向く。
「何故、ここに」
「青木様の様子がおかしかったからです」
「中に戻れと言っただろう!」
 そう怒鳴りつけられるが、宗佑は動かない。その相手に対する嫉妬心がそうさせる。
「誰が、貴方をこんな目にあわせたんですかッ!」
 情事の残る白く滑らかな肌。散らばった赤い痕を指でたどる。
「やめろ、触れるなッ」
 手を払われそうになるが、吸われ過ぎて真っ赤になった乳首を摘まんで指の腹で動かす。
「んぁ……っ」
 感じたのか甘い声をあげる青木に、
「誰が、貴方のここを、こんなにしたんですか?」
 ぐりぐりと刺激をあたえつつ、もう一方の手は腰を撫で太腿へと下る。
「誰が、貴方のここに精を注いだんです?」
 濡れた後ろの孔へと触れ、指をゆっくりと中へいれる。
「だめだ、宗佑っ、指を抜け」
「こんなにすんなりとはいりこめるなんて。ゆるいお口ですね」
「宗佑、やめてくれ」
 解された中は柔らかく、自分のマラもすんなりと飲み込むだろう。
 よい所に当たったか、甘く声をあげて崩れ落ちそうになった所に腰に腕を回して抱き寄せる。
「お願いだから……」
 青木のモノは反応してたちあがっている。
 他の男にはされてイっただろうに、自分に触られてイくのは嫌なのか。
「嫉妬で狂いそうですよ」
 青木をイかせたのが自分でないことに。
「何、を言って」
 色恋に疎いとは思っていたが、宗佑が怒っている理由にも気が付いていないようだ。
「あぁ、もう。貴方は鈍い人だ」
「鈍いとはなんだ。とにかく、私のことは放っておいてくれ」
「そんなこと、できるわけないでしょう」
 と、その身を抱き上げた。