鷹との出会い
姫様の護衛は第二騎士団が担当していた。
誰にでも優しく微笑む姫様に憧れる騎士は多く、妬まれることもあった。
特に第三騎士団の同期である男は俺に絡んできてそれがうざかった。
毎日あそびにくる鷹に愚痴ってしまうくらいには。
「あー、まじでムカつく。俺以外にも護衛は居るのにさ、同期だからかな」
俺の作る魔物肉のジャーキーは人気がある。
食べるかな?
食べやすい大きさにちぎって与えてみると口に運ぶ。
どうやらお気に召してくれたようで、指をはむはむと甘噛みをし、ジャーキーをくちばしで突いた。
「ほら、お食べ」
ハンカチの上にちぎったジャーキーを置いて小さなお皿に水を注いだ。
「お前はどこから来たんだ? こんなに美し毛並みでかっこよい鷹なのだから飼われているんだろうな」
胸に指を突っ込んで動かすと、これが気持ちよいみたいでグルグルと鳴き声を上げた。
「かわいいなぁ。顔は凛々しいのに」
猛禽類だから怖いし襲われるかもーなんて思っていたけれどおとなしいんだわ。今ではすっかり虜よ。
仲間と酒を飲んで騒ぐ時間も良いけれど、鷹と一緒に過ごす時間はゆったりとしていて癒される。
遊びに来てくれるのを楽しみに待つようにもなった。
随分と色々な話を聞かせていたよな。
それに胸のあたりを指でこちょっとしていたけれど、魔王の胸を弄ってた?
うわぁ、マジかー。
スローライフを送るのに始めたのは畑仕事だった。自分で作った野菜を使って料理をしてみたくてな。
畑で草を抜きながらもだもだとしていると、チビたちが俺のところへとやってくる。手伝いをしてくれるんだわ。
「ブレ兄、どしたの?」
「魔王様になんかされた?」
チビたちに心配させちゃったじゃん。全部魔王のせいだ!
心の中で八つ当たりをしつつ、俺は立ち上がる。
「んー、ちょっと疲れただけ」
「じゃぁ、ボクらががんばる」
「がんばるの」
おお、チビたち、なんて可愛いんだ。
今日も美味しいおやつを用意してあげるからな。
その前に冷たい飲み物を用意してくるかとキッチンへ向かおうとすると向うから鳥が飛んでくる。
クロスケかと思ったがどうも違うみたいだ。
どんどん近づいてきて、それが何か気が付いた。
「なんでだよ」
どうしてその姿で来るかな。
腕を差し出すとそこにとまる。それは鷹になった魔王だった。
「もしかしてあの時の鷹がリッド様だったって証明?」
すると鷹が肩へと移動して頬にすり寄った。くっ、くそかわいい。
「ずるいよ、俺がこの姿に弱いことを知っているくせに」
さらわれた後、俺は鷹のことを気にしていた。
俺は部屋にいなのに遊びに来ているのかなって。
「はぁ、また会えて良かったよ」
魔王だけどな。
「それにしても、なんで鷹なの?」
「グルル」
「もとの姿になりなよ」
その姿だといつもの俺になれないから。
鷹が飛び上がり、それがみるみるうちに魔王へと変わる。おおぅ、生で変身シーンを見れるなんて。あ、服って着ているものなんだな。
「鳥になれば自由に人族の国を見て回れると思ってな。鷹なのはそうなっただけだ」
「へぇ、でもなんとなくわかる。可愛い小鳥って見た目じゃないものな」
鷹であることは納得したが、思わず目が胸へと向いてしまった。
指で、魔王の……。
「あのさ、鷹の時に俺、撫でてたじゃん」
「あぁ。あれは実によい。顎の下をなでられているような気持ちだった」
顎、なるほど。魔王がそう思っているのならセーフだな。
「この姿の時に撫でても良いのだぞ?」
ぐい、と自分の胸を俺に近づける。おいおい、男の胸をなでる趣味はないぞ。
「え、普通に嫌だけど」
「撫でられる方がよいか。なるほど」
「言ってないから」
都合よく変換しないでください。
まったく。チビたちにおやつを用意しないといけないのに。
ふ、でもさ、こんなにイケメンなのに必死にアピールしてくるところなんて、俺ってすげぇ、なんてな。
「おやつ食うだろ?」
流されないように、会話を切るために別の話題を振る。
「あぁ。頂こう」
「それならチビたちと一緒に草抜き」
「わかった」
チビたちの方へと向かい草抜きを始める。
飲み物を先にと思っていたけれどおやつも一緒に持っていこう。
キッチンへと向かうと保存庫へと向かう。ひんやりとしているから飲み物とゼリーを冷やしておいた。
それをバスケットに入れて持っていく。
「休憩にしよう」
草抜きをしているチビたちと魔王に言うと休憩をするために作った椅子とテーブルの場所へとくる。
「今日はゼリーだぞ」
「わぁ、やったぁ」
チビたちが喜ぶだろうと思ってフルーツをいっぱいいれたゼリーだ。
その前に魔素茶をよそう。チビたちには蜂蜜とミルク入で魔王にはフルーツフレーバーのにした。
「昼ご飯作ってくるから。これ食ったらライニールとアルト呼んできて。リッド様はシーラにご飯の配達な」
了承の返事をもらい俺はキッチンへ。鳥の唐揚げ丼を作るためにたくさん揚げを作らないといけない。ほとんどがシーラの分だけどな。
ご飯を炊いている間に唐揚げの準備をする。殆どの調味料がある世界なのに、残念ながらマヨネーズはないので手作りしないといけないんだわ。
ご飯を炊いている間に唐揚げを揚げる。それからタレを作って絡ませてマヨネーズをかけて完成ってわけ。
「ブレフト、手伝う」
ライニールは鍛錬を終えると手伝ってくれる。長男だから母親の手伝いをよくしていたのだろう。手際が良いので助かる。
「それじゃ唐揚げを揚げていて。俺はマヨネーズを作る」
「あれ、うまいよなぁ」
尻尾がゆらゆら、耳がぴこぴこと動いている。本当、可愛い奴め。
マヨネーズとタレを作り、唐揚げはあともう少しというあたりでご飯が炊けた。
炊いたご飯の半分と、残りを六等分にする。野菜をのせてタレにくぐらせた唐揚げをのせる。そして仕上げにマヨネーズだ。
「ひゃぁぁ、うまそう~」
唐揚げも揚げ終わり、シーラの分を作る。大食いチャレンジ番組で見た、メガ盛りサイズだ。
彼女には特別に卵焼きとたこさんウィンナーをつけておいた。
「ライニール、丼をお願い」
「わかった」
飲み物とデザートはバスケットに入れて俺が持っていく。
一緒に執務室へとむかうと、テーブルの上に料理を置いた。
「幸せの匂い」
嬉しそうなシーラの姿を見て和む。あれが細くてスタイルの良い体の中に入っていくんだものな。
はぁ、今日もよい食べっぷりだわ。
部屋を後にして今度は俺たちのご飯を運ぶ。
きっとチビたちも喜んで食べてくれるだろう。