Short Story

愛撫

 簡単にシャワーを浴び、どうせ服を着てもすぐ脱ぐことになるからとタオルを腰に巻いて出てきたら、
「やる気満々ですね」
 といわれてしまった。
「お前は違うの?」
「いえ、俺もそうです」
 腕を掴まれて引っ張られて、もつれ合うようにベッドに横になった。
「こらっ」
「そんな恰好でくるから」
 やたらと優しいキスの雨が身体に降り注ぐ。
「はは、がっつくかと思ったのにな」
「自分を押さえるのに必死です」
「お前との旅行の時には、させてやるから」
 目を見開き、そしてふわりと笑みを浮かべた。
 シャツを脱がせ始めると、照れた表情を浮かべ、目が合うと顔を背けた。
「可愛いーの」
「やめてください。好きな人にそんな事をされたら、こうなるでしょっ」
「あ、うん、そうだな」
 急にこちらも照れてきた。
「あぁ、もうっ。触れよ」
「はい」
 手が肌を撫で、ゾクッと身体全身が痺れた。
「あっ」
 これはヤバイ。
 石井に触られていると思うとたまらなく感じてしまう。
「感じているようですね。ここ、舐めてもいいですか?」
 乳輪を指で円を描くようになぞられる。時折、乳首をかすめて、反応してしまう。
「ん、いい、ぞ」
 舌先で弄られ、それを口に含んだ。
「え、ちょっと、吸っていいとは、あっ」
「ん、こりこりしてきましたよ」
「弄られればそうなるだろ、って、んぁ、両方は駄目だって」
 やばいくらいに気持ちが良くて身体がのけ反ってしまう。
 親指の腹で捏ねられるたびに、びくびくと震え、時に爪でかりかりとされて、甘い声で息を吐く。
 尻の当たりに押し付けられたかたいモノ。
 自分に興奮してそうなっているのだと、当たるたびに感じさせられる。
「いし……、かたくなってる。一緒に擦ろう?」
「それなら、乳首を弄りながら素股で」
「え、それは、ちょ、あっ、あぁっ」
 かたいモノが後ろから抜き差しされ、自分のモノを一緒に刺激し始める。
「や、あぁ、いしいのがこすれる」
「たまらないですね。貴方の声も、濡れた箇所も」
 ぎゅっと乳首を摘ままれ、
「ひやぁ」
 と太腿でで石井のモノをしめつける。
「くっ」
 耳元に、低く色っぽい声。どろりと熱いモノをかんじた。
「まだ大浜さんはイけてない、ですよね」
 顔をそちらに向けて軽く口づける。
「ん、俺も、もう、イく……、だから、下、触ってよ」
 膨れたちあがっているモノはあと少しではじけそうだ。手がそれを包み込み扱きはじめる。
「あぁっ」
 芯がしびれる。高みにのぼりつめた欲は放たれ、どくどくと蜜が流れ出る。
 濡れた手を見つめ、ほのかに唇を綻ばす。
 イかせたことがそんなに嬉しいのかと、手を伸ばして引き寄せる。
「わっ」
 そのまま大浜の胸のあたりに頬をつけるようなかたちとなり、髪をわしわしと掻きまぜた。
「嬉しいか?」
「はい。俺が大浜さんをイかせたんだって」
「あははは、次は一緒にイこうな」
 きっと石井は幸せそうな表情を浮かべる事だろう。
 それを想像すると楽しみでしかたがない。
「はい、必ず」
 そのまま腕の中へと抱きしめて、暫しこの心地よさに身をゆだねた。

 朝、テーブルの上のチョコレートはすべてなくなっていた。
 まさか、武将が食べてしまったのだろうか。そうだとしたら大変だ。
「おい、石井」
 そう思えば石井と武将の姿がない。
「やっぱり武将か。病院に行ったんだな」
 サイドテーブルに置きっぱなしのスマートフォンを取りに向かい、石井へと連絡を入れる。
 すると玄関の方から着信音が聞こえてそちらへと向かうと、尻尾を振りながら武将が出迎えてくれる。
「石井、武将……」
 なんともなさそうな姿をみて安堵する。
「朝ご飯を買いに。あ、もしかして帰ったと思ったんですか?」
 ニヤニヤとしている石井をみて、こんな時ばかり表情を素直にだしているのがむかついて八つ当たりとばかりに頭を叩く。
「チョコレートが食ってあったから、武将が食べたのかと思ったんだよ」
「あぁ、あれは俺です」
 あっけらかんとした表情で言われた。
「え、甘い物、平気なの」
「はい。かなり好きな方です」
 いつも菓子を食べないからてっきり苦手なのだと思っていた。
「貴方が好きな男からのですよ? むかつく」
 ただのやきもち。
「なんだよぉ、本気で心配した」
「すみません。貴方に触れられて、しかも一緒に朝を迎えられて嬉しかったのに、アレをみたら腹が立って」
 なんて可愛い理由なのだろうか。力が抜けてその場にしゃがみ込む。
「馬鹿野郎、メモ位おいておけよ」
「はい。次はそうします」
 片膝をつき肩に腕を回して抱きしめられキスをされる。
 それを受け入れて、唇が離れる。
「今度、買って返せよ」
「わかりました。その時は一緒に買いに行きましょうね」
「武将もな」
 武将の頭を撫でると、ワンワンと吠える。まるで嬉しいといっているかのようで、その身を抱き上げて頭と頭をくっつけてぐりぐりさせれば、
「俺も混ぜてください」
 と顔を寄せてきて、一人と一匹を包むように抱きしめながら、暫くの間、この暖かな雰囲気に包まれていた。