寂しがりやの君

つながる身体

 俺には三人の友達がいる。
 一人はクラス委員長の尾沢。真面目で誰にでも平等。俺が一番信頼している男だ。
 そしてモデルの仕事の関係でたまに学校を休む御坂。弟のように感じてつい世話をやきたくなる。時折、キラキラとした笑顔を向けてくる。
 あとの一人は神野だ。
 はじめはただののクラスメイトという関係だったのだが、俺にちょっかいをだすようになり、喧嘩したり女子に睨まれたりと散々な目にあった。
 だが誰よりも俺の事を想い、冷えた心を包み込んで温めてくれた。名前で呼ばれるのも家族や親戚意外になく、慣れるまではドキドキして落ち着かなかったが、やめろと言っても止めないアイツのしつこさに負けて「悟郎」と呼ぶのを許した。
 それに、俺にとって神野は特別な存在だ。そういう意味で好きだとおもっている。
 まだ好きとは告げていないが、俺達は一応、恋人同士という関係だしな。
 学校が終わってから家に遊びに来るときは透と一緒にご飯やおやつを食べたりゲームをしたり。ご飯の支度をしつつ二人の姿を時折眺める。それが俺の定番だ。
 意外と好きなんだよな、その時間が。たまに二人が俺の方を振り返って、嬉しそうに笑うからだ。
 そして、この頃は休みの日にも遊びに来るようになった。親が休みなので俺の部屋で二人きりになり、その時に良い雰囲気になればキスをする。たまに服の下から手を入れられて腹を撫でられる事があるが、キスは嫌じゃないので受け入れている。
 今日も神野は遊びに来ていて、俺の部屋でDVDを見ていた。
 しかも借りてきたDVDはアクションで、主人公にピンチが訪れてハラハラする展開であって恋愛要素なんてこれっぽっちもない。
 それなのに何故、先ほどから俺を熱い目で見つめているのだろう。
 その視線を無視して画面を見つめていたが、次第に神野の腕が俺の肩に回りその身を引き寄せた。
「おい、邪魔すんなよ」
 今、良い所なのだ。気を散らさないでほしい。
「後で」
 だが、神野は止まらない。肩を掴むとそのまま押し倒された。
「おまっ、いい加減に」
 強引さにムカついて引きはがそうとするが、
「ごめん、限界」
 唇を唇でふさがれた。
「んっ、んんっ!」
 たっぷりと口内を舌で弄られた後、唇が離れる。唾液で濡れている口を甲で拭い神野を見上げれば、いつもの優しい目はどこに、獲物を狩る肉食獣の如くぎらつく目をして俺を見ていた。
 前に一度だけ神野を怖いと思った事がある。その時のようで、ゾクッと寒気を感じ腰が引けてしまう。
「やっ」
 顔を引き離そうとするが後頭部を押さえられキスをする。ちゅっちゅと水音がいやらしく、神野の舌が俺を翻弄していく。
「ふ、あ」
「予想通り、可愛い反応……」
 唇が糸を引きながら離れ、ペロリと濡れた唇を赤い舌が舐め、熱で少し目元が赤らんでいて、その仕草と共に扇情的にみえた。
 突き飛ばせばきっと逃げられるのに、何ともいえぬ快感が俺の自由を奪っていく。
 自分が自分でないような感覚に、目元がじわっと熱くなる。
「何、泣いちゃったの?」
「泣いてなんかっ」
 言葉とは裏腹に目元から涙があふれ出る。
「いつもは君が泣かせているのにね」
 唇を撫で、そのまま首を鎖骨を撫でていく。
「やだ、こうの」
 手がシャツのボタンへと触れ、一つ、また一つと外されていく。
「駄目っ」
 手を掴んで止めようとするが、また唇を奪われて歯列を撫でられる。
「んふ」
 キスで思考が蕩けかけている間に、ボタンは全て外されていて、唇を離して神野の手が胸が身体に触れた。
「ふっ」
 脇腹を撫でていた手は上へと動き、わきの下から胸へと移動する。
 指が乳首をかすめ、その瞬間、ピリッとしたものが身体を突き抜けた。
 それに神野も気が付いたか、
「悟郎はここ、感じるんだな」
 と指で摘まみ動かした。
「やめろ、感じてねぇしっ」
 動かされるたびに甘く身体が痺れて、キスをされた時のように頭ン中が蕩けてしまいそうになる。
 でも俺は女じゃねぇ。胸を弄られて気持ちいいとか、ありえない。
「男だって感じる人はいるよ」
 まるで俺の心を読んだかのように神野がそう口にする。
 まじか。男でも感じるものなのか。
 試しにと神野の乳首をシャツ越しに摘まむ。
「え、ちょっと、痛いっ」
 本当に痛そうな顔だ。俺は指を離すと、
「俺は感じないタイプってだけだよ」
 とふにふにと指先で捏ね、それが気持ち良くてはぁっと息を吐く。
「気持ちいいって顔している」
 口角を上げ、そう指摘する神野に、俺は眉間にシワを寄せ睨みつける。
「してねぇ」
「そう。ならやめる」
 手が離れて、じんじんとした熱のみ残された。
 それを耐えるように身を丸めるが、身体は神野の指を求めてしまう。
 涙は止まらないし熱が収まらない。どうしたら良いのかわからなくて混乱する。
「悟郎、ちゃんと口にしないと、俺は黙って見ているだけだよ」
 その言葉に目を見開き神野を見れば、腕を組みをしながら俺を見ている。
「あ、うっ」
 素直に慣れないのに触れて欲しいと思っている俺。言葉より涙出る。それでも神野は触れてくれない。
「一人で続き、出来るの?」
 答えられず、シーツを握りしめながら神野を見つめる。
 そんな俺にため息をつき、ベッドから立ち上がった。
「あ……」
 気がつけば手が、神野の服を掴んでいた。
「素直じゃないんだから」
 と掴んで俺を引き寄せて、額に、頬にとキスを落とす。
「うるさい……っ」
 涙でべちょべちょの顔を、手の甲で拭う。
「それに泣き虫さん」
「怖エぇんだよっ、こんな事、したことがないから」
 男はもちろんのこと、女子ともした経験はない。
「え、なに、童て……」
「言うな」
 しょうがないだろ、皆、怖がって逃げていくんだ。触れ合うなんて出来る筈がない。
「そっか。俺が初めての相手なんだね」
 やたらと嬉しそうな表情を浮かべ、乳首を口の中へと含んで吸い上げる。
「はぁ、あぁっ」
 ちゅぱっと音をたてながら吸われた箇所からジンジンと感じて、背を反らし胸を張る。
 手は腰を撫で尻へと触れる。
「ふ、あ、こうの」
「ん、こりこりしてて、美味しいよ?」
 乳首を弄られるのが気持ち良すぎて、身体は疼きっぱなし頭の中は蕩けきっていて考える事が出来ない。
 尻を撫でる手が怪しく動き、尻の穴を人差し指で押されて一瞬で目が覚めた。
「なっ、どこ触ってんだよ」
「え、どこって、俺が悟郎の初めてを貰おうかなって」
「はぁ? 何をしようっていうんだよ」
 ガキの悪戯じゃねぇんだよ。流石に気分が萎えてきた。
「もう触んな」
 その手を払い除けて身を起こすが、すぐにベッドに押し倒される。
「でも、男同士はここに、これを入れるんだよ」
「ひっ、あ」
 今度は強めに尻の穴を押されて背筋がピンと伸び、撫でられた下半身のモノが感じて身体が甘く痺れた。
「神野! てめぇ、ここは入れる場所じゃねぇよ」
「でもね、ここの中も弄られると気持ちいいよ?」
 気持ちいい事、好きだよねと、指が俺の先っぽを弄る。
「あっ、あぁぁ……」
 こいつはヤバイ。口がだらしなく開きながら指が与える快感に震える。
「欲しくない? もっと良い気持ちになれるよ」
 耳元で囁く甘い誘惑。
 今の俺に抗える訳がねぇ。頷く俺に神野はニンマリと笑みを浮かべた。
 ただ、未経験故に今から起こる事が想像できなくて怖いというのもある。
「なぁ、マジで突っ込む気かよ?」
「マジで。その為に準備をするから」
 四つん這いにされ、腰を高く持ち上げられ、枕に顔を埋めるかたちとなる。
「力をぬいてね。その方がスムーズに出来るから」
「あ、あぁ」
 尻にとろりと冷たい物をたらされてヒィと声をあげてしまう。
「何」
「ローション。いつか悟郎とこういう事をしようと思って、部屋に隠しておいた」
「なんだって!」
 何、人の部屋に隠してんだよ!
 ていうか、部屋掃除はきちんとしているのに、全然気が付かなかった。
「てめぇ、人の部屋に」
「だってこれがないと辛いの悟郎だよ?」
 ゴムの感触。指につけたのか、それが中に入り込んできて掻きまわされる感覚は、もぞもぞとして気持ちが悪い。
 だが、ある箇所をかすめた瞬間、乳首を弄られた時のような快感が芯を突き抜けていき身体が跳ねあがる。
「あ、良い所、見つけた」
 指がその箇所を弄りだす。
「あ、あっ、そこ、やっ」
 頭ン中は霞がかかり、ボーっとしてくる。
「そんな可愛い声だして」
 さらに指が増え、たまらず声をあげてしまう。
「ん、こうのぉ」
 もっとそこを弄って欲しい。この昂ぶりを外へと放ちたかった。
「俺も、悟郎の中で気持ち良くなりたい」
 と後ろにかたくて熱いモノふれた。そう、きっと神野のアレであり、少し濡れているのは我慢汁を垂らしているからで……。
 それを擦りつけられた時には顔をそちらに向けていた。
「え、おま、それはっ」
 興奮して膨れており、それを俺の中に入れるとかって、嘘だろう!?
「無理だ、絶対に無理」
 逃げ出そうと身体を捩るが、腰をガッチリと掴まれてしまう。
「大丈夫だよ。悟郎の中、すごく柔らかくなってるから。じゃぁ、入れるよ」
 ずぶずぶと水音がし、狭い所に太くて熱いモノが入り込んでくる。
「あ、あぁ、あ……」
 神野のが、俺ン中に。かなりの質量のモノにうまく息をすることが出来ずに強張ってのけ反る。
「ん、少しキツイかな。悟郎、力を抜こうか」
 手が俺のモノへと触れる。
「あひゃっ」
 かたくなり感じやすくなっている俺のモノは、神野の手の中で喜び蜜を垂らす。
 力が抜け、神野のモノが奥へと突き進む。
 先っぽが気持ちの良い個所にあたり、ビクッと身体が震えた。
「ふっ」
「つながったね、悟郎」
 突き上げられて中の神野のモノが俺のイイ所を刺激し始める。
 ヤバい、気持ち良すぎる。意識などすぐに快楽に溺れて、涙も涎も垂らしながら腰を振るう。
 手が俺のモノをこすり、前から後ろからと刺激されて、一気にのぼりつめてはじけた。
 ぴゅると白濁をまき散らし、それが神野の身体を濡らす。
「はやいなぁ」
 中のモノはいまだ太いままで、放ったばかりの俺にゆるゆると刺激をあたえはじめる。
「ふぇ、あ、なんで」
「なんでって、俺、まだイってないよ」
 萎んでいたモノは、神野の手と後ろの刺激ですぐに元気を取り戻し、あっという間にたちあがる。
 再び身体じゅうを快楽が襲い、腰が揺らぎだす。
「あ、あ、こうのっ」
「ん、今度は一緒に、イけそうだね」
 と腰の動きが激しさを増し、そして、俺と一緒に精を放った。
 中のモノが抜けていく。
 今だ甘く痺れるそこは、まるで小鳥が親からの餌を強請るように、俺の尻の穴も神野を欲しがってひくひくとしているんだ。
「こうのぉ、欲しい……」
 穴が見えるように指で広げて見せれば、神野が息をのんだ。
「悟郎、欲しかったら俺のをたたせて」
「うん」
 手で包み込んで擦る。しょぼくれていた神野のモノは俺の手の中で徐々にかたさを取り戻す。
 おおきくなぁれ、メイドのような口調で俺は頭ン中で呪文をかける。
「もういいよ。ゴム、はめて」
 枕のわきにおかれたゴムを一つてにすると口で咥えて開ける。
 その姿にごっくんと唾を飲み込む。
「何、そんなエロい目で見て」
 ゴムを開ける時、今から俺を食うぞって感じがたまらない。
「ほら、はめてよ」
 中身を掌にのせ、俺はそれを神野のにとりつける。経験がないからこれもつけた事がないわけで、なかなかうまくいかなくて破れてしまった。
「悟郎、よく見ててね」
 と新しいのをあけてはめて見せてくれる。
 ただはめているだけなのに、その姿がいやらしくて、はやく欲しいと後がもぞもぞしてきた。
「そんなに食べたいの? 良いよ、おいで」
 両手を広げ俺を迎え入れてくれた。
 俺は膝の上に跨って、ゆっくりと腰をおとして中へと咥え込んでいく。
「んぁ、はいった」
 上手く入れることが出来て嬉しい。そんな俺に良くできましたと神野がキスをする。
 キスも気持ちよくて好きだけど、俺としては乳首を弄ってほしい。
「はぁ、ん。こうのぉ……」
 頬を両手で包み込み、胸へと誘導する。
「ここ、触ってほしいの?」
 と確かめるように俺を見ながら、舌の先でちろちろと乳首を舐められる。
「あふ」
 もっと触って吸って欲しい。
 頬から手を離して抱きかかえるように後ろへと手を回して、神野に胸に押し付ける。
「悟郎はおっぱいを弄られるの、すきだね」
「ん、しゅき……」
 頭ン中はまともじゃないから、気持ち良すぎて呂律が回らない話し方も気にならない。
「あぁ、本当、可愛いなぁ」
「ちゅうってして?」
 突起した乳首を咥えて吸い上げられて、たまらなく甘い声をあげる。
 後ろからも激しく突かれ俺は昂ぶりそして欲を神野の腹にぶちまけた。

 はじめはゴムをしていたが、途中からはつけるのを待っていられなくなった。
 俺の中には神野の精をたっぷり注がれて、収まりきれずにあふれ出ていた。
 身体じゅうが唾液と汗と精でぬるぬるするが、体力が尽きるまでつながり続けた結果、腕一本を動かすのも億劫なほどに怠い。
「いっぱい注いじゃったね」
 怪しく尻を撫でられて、俺は触るなと睨みつける。
 とにかく、今は身体を休めたい。話をするのも面倒なくらいだ。
「俺は寝る」
「えぇ、ピロトークしようよ」
 腕枕してあげると言うが却下する。
「付き合いきれねぇ」
 横を向いて目を閉じれば、背中から神野に抱きしめられた。
「これくらいは許して」
 と文句をいおうとしたら、その前に言われてしまい、仕方なく黙る。
 くっついて寝るのはとても暖かくて心地よい。
「悟郎……、繋がれて嬉しかった」
「そうかよ」
「愛してる」
「……もだよ」
 俺も、小さくつぶやいた言葉は神野に届いたようで、背中に額が触れて強く抱きしめられた。
「悟郎は、悟郎だけは、俺の傍にずっと居てくれ」
 その切ない声に、俺は振り向いてその腕の中に神野を抱きしめる。
「ずっと傍に居てやるから、お前はいつもの調子でヘラヘラしてろ」
「えぇ、俺ってそんなにヘラヘラしてるかなぁ」
 ほっとしたような表情を見て、あんなに泣いたのにまた涙が出そうになった。

 神野は寂しがり屋だ。
 誰よりも愛情が欲しい癖に、誰からも貰おうとしない。だが、俺に対しては求めてくる。
 以前なら鬱陶しいだけだったが、それに応えてやりたいと思うのは神野の事を愛おしく思っている。
「傍にいるから、だからお前も俺の傍にずっと居ろよ?」
 寝ている神野の髪を撫でながら俺はそう呟いた。