恋をする甘党の彼

年下の彼は甘い夜もお好き

 江藤と大池には自分達が付き合う事になった事は話してはあるが、改めて二人そろって報告をしにいこうかと、言いだしたのは信崎で。
 色々と心配をかけてしまった二人にはきちんとお礼を言いたかったのでその誘いを受けた。
 すると江藤がお祝いをさせてと言ってくれて。四人で食事を一緒にすることになった。
 だが、信崎に急な仕事が舞い込んで、何時に帰れるかわからないから先に行っていてくれと言われ、真野は大池と共に江藤の家へと向かう事になった。
 江藤の元にも連絡があったらしく、自分を待たずに先に食事をしていて欲しいということだった。
「残念だけど、先にはじめていよう」
 気を使うように江藤が真野の背中をポンとたたく。
 一緒に報告と食事をしたかったが、仕事だから仕方がない。
「はい。江藤さんの作ってくれたご飯、楽しみだなぁ」
 大池が買ってくれたワインと、江藤が作ってくれた料理は美味しく。惚気話をしながらつい酒が進んでしまった。
 あぁ、またやってしまった。
 意識をなくすくらいに酒を飲んで、そのまま寝てしまったようだ。
 起きあがろうとしてアレっと首を傾げる。
 誰かの腕が腰をがっちりと抱きかかえていて、すぐ傍で眠る存在に気が付く。
「え、信崎さん、なんで? 起こしてくれたらよかったのに」
 眠る彼の髪を撫でながら、ふっと口元を綻ばす。
 一度寝てしまうとなかなか起きない信崎の髪を、こうして撫でたのはつい最近の事。しかも彼の部屋のベッドの中でだ。
 幸せだなとその寝顔を眺めていたら、
『ん、せんぱい、もっと』
『くっ、こら、ちょっとは休ませ……、あぁっ、ん』
 奥の部屋から、色気を含んだ声が聞こえてくる。
 なんとも居たたまれない。
 真野は顔を真っ赤にしてどうしようとそわそわし始める。
『駄目って言いながらしめつけて俺のを抜かせてくれないのはせんぱいですよ?』
『だって、おまえが、俺の弱い所を突くからぁっ』
『ここをこうすると、江藤先輩が俺をもっと欲しがってくれるんですもの。……ね、キモチイイでしょう?』
『や、あ、あぁぁ』
 色気を含んだ二人の声にあてられて体が熱くてたまらない。
 後ろには恋人の温もりがあり、耳に息がかかるたびにビクッと身体が震えてしまう。
 トイレに行きたくても信崎の腕は解けず、うずくまって耳を押さえる事しかできない。
 すぐ傍に恋人がいるのに、自分ですることも出来ずに我慢するしかなくて。
 寂しくて唇が震え、涙が込み上げてきて声を詰まらせる。
「う、うぅッ……」
 恋人という甘えられる存在ができたからだろう。余計に我慢ができなくなっている。
 信崎の大きくてゴツイ手で肌を撫でて欲しい。真っ赤な舌を這わせて口に含んで吸い上げて……。
「ひぅ、のぶさきさん、起きてよぉ」
 辛い、辛い、つらい。
 張りつめた箇所が早く触ってと主張する。
『大池、あっ、あぁ……ッ』
 奥では江藤がイったのか、いっそう、声を張り上げ、そして甘さを含んだものへとかわる。
 羨ましい。
 自分は気持ち良くすらなれてないというのに。
「信崎さん」
 もう嫌だ。
 めそめそ泣きながら信崎の腕をぎゅっと掴む。
「……ん、真野?」
 指が頬に触れて濡れている事に気がつき。どうしたんだと、組み敷かれた。
「のぶさき、さぁん」
「え、泣いて、一体どうした!?」
 なにか怖い夢でも見たのか、と、泣く真野を心配するように額をくつけて目を覗き込んでくる。
 ふにゃと顔をくずしてぎゅっと首元に腕を回して信崎を引き寄せた。
「うぉッ」
「もう、我慢できません」
 貴方が欲しい。
 そう、耳元に囁きかければ、扉の奥で行われている情事に気が付いたようで。
「あぁ、成程、アレにあてられたのか」
 と囁き返されて。耳元をぺろりと舐められた。
「ん……ッ」
 ゾクゾクっと芯が痺れる。
「大池の奴、可愛い声でおねだりしちゃって。江藤の奴も随分と色っぽい事で、なぁ」
 負けちゃいられねぇ、な。
 と、口角をあげて、真っ直ぐと真野を見つめる信崎に、ぶわっと熱が一気に高まる。
「のぶさき、さん」
 既に起ちあがっているモノを見るなり、弓なりに目を細める。
「何、声だけでこんなんなっちゃったの?」
「違います。信崎さんとシたときの事、思いだしちゃって。すぐ傍にいるのに触ってもらえないのが悲しくて……、んあぁっ」
 指で先端をぐりっと弄られる。
「そっか。そんなに俺が欲しかったのか」
 じっと真野の様子を見つめながら指が裏筋を撫でてそのまま手の中へと包み込まれる。
「ふぁ、のぶさきさんのも一緒に、ね?」
 ベルトに手を伸ばして外し、ズボンのチャックを開く。
 下履きごとズボンを脱がせれば、信崎の腕が真野の腰を抱き寄せて跨ぐようなかたちとなり、互いのモノがこすれあう。
「あぁっ」
「真野、動いて」
 信崎の指が口の中へと入り込む。蜜のついたままの手で後ろを弄り始める。
「ん、んっ」
 口内を弄る指をしゃぶりながら腰を振る。
 唾液で濡れた指が口の中から抜け、その指を追うように舌を絡める。
「今度はこっちのお口で咥えて」
 ね、と、後孔に濡れた指が触れて、ビクンと腰が震え。中へと入り込む指へと意識が向いてしまう。
「ほら、こっちに集中しろ。一緒にって言ったの、真野だよな?」
 ぐりっと腰を押し付けられて背を反らせる。
 信崎から与えられるモノに真野は抗えない。
「あん、でも、あっ、あぁぁ」
 それを解っていているから、信崎は手を緩めないのだ。
「しょうがないな。ほら、俺にしっかりとしがみついとけ」
 身を起こした信崎に抱きかかえられるようなかたちとなり、後ろを弄りながら互いのモノを大きな手が握りしめる。
「ん、のぶさきさんっ」
 蜜で濡れた真野のものですべりやすく、すぐに信崎のものもかたくなり蜜があふれ出す。
 ぬちゃぬちゃと水音をたて気持ちが一気に高鳴り、はじけて蜜が飛び散った。

◇…◆…◇

 乱れた真野は可愛かった。
 情事に夢中になるにつれ、大胆になり信崎を誘う。
 抜こうとするとイヤイヤと首を横に振るし、中を自分の放ったものでいっぱいにして欲しいと強請る。
 真っ赤になってぷっくりとふくれた乳首を厭らしく撫でて、嬉しそうに微笑まられた時には、理性が飛んで真野の中を乱暴に掻きまわしてしまった。
『荒々しいのも、良いですね』
 朱色に頬を染めて信崎の胸へ頬を摺り寄せた。
「あ……、顔、にやけているな、こりゃ」
 こればかりは真野が可愛いからしょうがない。
 疲れて眠る真野を眺めながら煙草をふかしていれば、そっとドアが開き、江藤が顔をだす。
「わるい、うるさかったか?」
「いや、俺らもだし。でも、真野君の声はちょっとヤバかったな」
 色っぽいな、と、口元を隠し照れる江藤に、だろうと頷く。
「俺らさぁ、お前等にあてられちゃってねぇ」
「そう、なんかごめん」
「いや。そのお蔭でもえたし」
 ニヤニヤとだらしなく口元を緩める信崎はただの助平親父そのものだ。
「大池の奴、好きなモンにはホント、可愛い反応するね」
「あぁ、可愛いよ」
 幸せそうに笑う江藤に、信崎は気持ちがほっこりとなる。
 高校の時から恋愛には苦労してきたの事を知っている。だから大池との恋が上手くいっていることが嬉しい。
「えとうせんぱい……」
 眠そうに眼を擦りながら大池がリビングへ顔を出す。
「なんだ、目が覚めたか?」
「なかなか戻ってこないので心配で。随分と無茶をさせてしまいましたし」
 さりげなく腰に腕を回す大池に、
「お前さぁ、江藤に散々強請ってたけど、何回ヤりゃ気がすむんだよ」
 からかうように言えば、まじめな顔をして指を折り曲げ始める。
「ちょっと、信崎! 大池もヤった回数なんて数えなくていいから!!」
 顔を真っ赤に染め照れる江藤が、寝るよと言って大池の背中を寝室の方へと押す。
「おやすみ」
「おやすみなさい、信崎さん」
「あぁ、おやすみ」
 信崎は真野を腕の中へと抱きしめて目を閉じる。
 明日、真野が目を覚ましたら、きっと昨日の事を思いだして恥ずかしそうに顔を赤らめて、潤む目で信崎を見つめてくるのだろうな。
 そんな可愛い恋人の姿を思い浮かべながら、明日が楽しみだと口元を緩めた。