生涯の伴侶

お背中を流させて

 祥蘭という小国で作られている髪の石鹸は泡立ちと良い香りがする。
 昔から愛用していたるのだが、大国であるワシャーの貴族達の間で人気になり、噂が噂を呼び今ではこの国でも商品が入荷されると即完売になってしまう人気ぶりだ。
 普通に入手困難となってしまった石鹸を三番目の兄に分けてもらい、ルージュの中でやってみたいことの一つである、フェラルドの背中を流してあげたいという夢が膨らんでいく。
 きっとこの石鹸を使って洗ったら喜んでもらえる。柔らかな布にいっぱい泡を立てて体を洗うととても気持ちが良いのだ。
 フェラルドが休みの時にお願いしてみようかと、その日を楽しみに待った。

 そしてフェラルドの休みの日。
 いつものように二人部屋でのんびりと過ごすのだが、ルージュはいつきり出そうかとソワソワと落ち着かない。 
 そんな様子にフェラルドがどうしたんだと尋ねてくる。
「え?」
「先ほどから落ち着きがないな」
 フェラルドの言葉に、しどろもどろになりつつ石鹸の話からはじめて背中を流したいと言う事を伝える。
「背中を? 俺は別にかまわないが……」
 小首を傾げるフェラルドだったが、あぁ、そうかと何かに気が付き掌を打つ。
「そうか、背中を流しあう事などないか」
「はい、そうなんです!」
 伴侶の背中を流すのも務め。そう思いこんでいる節があるルージェは力いっぱい返事をする。
「わかった。じゃぁ、一緒に風呂に入ろうか」
「はい」
 あまりに嬉しそうな返事をするルージェにフェラルドが笑いながら頭を撫でてくれる。
 それが嬉しくて、ふにゃっと笑えばフェラルドが唇に軽く口づけをした。

 食事を済ませて一時間ほど休んでから風呂に入る。
 薄い衣装を身に着けて髪を縛り上げて手に柔らかい布を持つ。
 その恰好をみたフェラルドが、
「すごい気合だなぁ」
 とくつくつと笑う。
「私にとっては大仕事ですから」
 力仕事など今までしたことのないルージェにとって、フェラルドの背中を流すことは一苦労だろう。
 石鹸を布にこすりつけて泡たて、フェラルドの背中を擦り始める。
 きめ細やかな泡、そして良い香りが鼻腔をくすぐる。
「ほう、随分と良い香りがする石鹸だな」
「祥蘭の石鹸なんですよ」
 兄上に譲ってもらったのだと言いながら力いっぱい背中を擦るが、
「ルージェ、もう少し強めに擦ってもらえるかな?」
 といわれて、内心、「もっと?」と思いつつ更に力いっぱい背中を擦るが、すぐにばててしまって力が徐々に入らなくなる。
 それに気が付いたのか、
「ルージェ、ありがとう。すごく気持ちよかったよ」
 とフェラルドが振り向く。
「すみません」
 きっと物足りないだろうなと落ち込みそうになるルージェに、
「次はルージェの番だよおいで」
 と手を差し出される。
 自分を励ますように言ってくれたのだろうと、フェラルドの優しさに潤みそうになる。
「それを脱いで」
「……はい」
 ルージェは言われるまま、濡れて張り付いた薄い衣へと手を伸ばした。

 ◇…◆…◇

 濡れて張り付いた薄い衣がやたらと色っぽく見える。
 衣を開けば、真っ白で綺麗な肌が晒し出される。小ぶりな上も下も綺麗な桃色をしていて、その姿に見惚れて喉が鳴る。
 我に返ったフェラルドはそれを誤魔化すようにルージェの腕を引いて自分の脚の上へと座らせた。
「あ、洗うぞっ!」
「はい、お願いします」
 美しい肌を傷つけぬよう丁寧に洗っていく。
「あっ」
 ぴくっと体が震えルージェが気持ちよさそうな表情を見せ、それがあまりに色っぽくてフェラルドは目を見張り腕を止める。
「フェラルド?」
 どうしたのですと首を傾げるルージェに、なんでもないと再び体を洗い始める。
「フェラルドの洗い方はとても優しくて気持ちいい」
 顔を振り向かせて微笑むルージェに、下半身がずくっとしてこのままではあぶない。
「おしまい」
 と、泡を洗い流してそのまま抱きかかえて湯船へと連れ込む。
「あの、フェラルド」
「なんだ?」
「その、溜まってません、か? 」
「なっ」
 一体何を言いだすのだろうか。そう思いルージェを見る。
「伴侶としてこの家に嫁いだ日から執事さんに言われて。私の方は貴方のを受け入れる準備はできております、よ?」
 それはつまり、後ろに受け入れる準備はできているといいたいのか。
 いきなりの告白に動揺を隠せないフェラルドに、ルージェが恥ずかしそうにしながらも更に迫ってくる。
「お願いです。私の中に貴方を下さい」
 ぎゅっと手を掴まれて、そう、自分の体は素直に反応をしてしまったのだ。
「フェラルド」
 跨っているから気が付いたのだろう。かたくなった腰のモノに。
 その瞬間、ぽろぽろと涙を流し始めるルージェ。
 伴侶だからと無理やりしなくてはいけないなんて事はない。ルージェの大切にしたいと思い始めていたフェラルドは、そっとルージェの身を引き離した。
「執事に何を言われたかしらないが、無理をしてすることではない」
 だから泣くなと涙を拭うように指で撫でれば、違うんですと首を振る。
「嬉しいんです。私に反応してもらえたことが」
 その言葉に理性は飛ばされ、ルージェを抱き上げて立ち上がる。
「え、あ、フェラルド?」
 互いに濡れたままの恰好で寝室へと向かい、ベッドの上へとその身を押し倒した。

 開いた唇から舌を割り込ませてルージェの舌へと絡めれば、それに応えるように拙い動きで舌を絡めだす。
 それがあまりに可愛くて、キスをしながらルージェの肌を愛撫する。
「ん……」
 綺麗な色をした乳首を摘まんで動かせば、感じているようで身体が小刻みに震えている。
 声が聴きたくて唇を離せば、透明な糸をつなぎ合う。
「あぁん、ふぇらるどっ」
「ルージェの此処はおいしそうな色をしている」
 チロチロと舌の先で突起し始めた乳首を弄れば、恥じらうように手の甲で顔を隠して視界を塞いでしまう。
「駄目だよ、君の可愛い顔を隠さないで」
 手にキスをしてどかすように言う。
「や、恥ずかしいっ」
「それに俺が君に触れてどうかわるか、見てみたくはない?」
「フェラルドが、どうなるか?」
 それは見てみたいと、ルージェの目がいっていた。思った通りの答えに口角を上げて、
「俺だけを見て感じろルージェ」
 自分へと意識を向けさせ、たちあがって蜜を流す小ぶりのモノへと舌を這わせて口の中へ咥える。
「あぁ、あぁぁ……っ」
「ん、可愛いな」
 小さなモノをじゅるじゅると卑猥な音をたてて吸う。
「吸っちゃ、いやぁ」
「でも、気持ちいいって、蜜がいっぱい垂れてるぞ?」
 ふふっと笑い、ルージェへと見せつけるように弄っていれば、
「あぁっ」
 と声をあげて、口の中へと苦い味が広がった。
 ルージェはがくがくと震えながら欲が口の中へと放たれて、フェラルドはそれを飲み込んで、塗れた唇を舌でなめる。
 達した余韻で惚けるルージェだが、すぐにフェラルドにしてしまった事に表情が硬くなる。
「あぁ、そんな。フェラルド」
「別に気にするな」
 ルージェの放ったものだと思えば、全く不愉快な気持ちにはならなかった。
 泣きそうなルージェの目元に頬にと口づけを落としながら、
「ルージェは俺のを飲んではくれないの?」
 と尋ねれば、首を横に振りながらそんなことはないと答える。
「なら俺も同じだ」
 だからもう気にするなといい、潤滑油のある場所を聞く。
「……ドレッサーの引き出しに」
 執事から手渡されていた潤滑油は残り少なくなっており、随分と前から自分を受け入れる準備をしてくれていたという事に胸が高鳴る。

 ルージェをうつ伏せにし腰を高く持ち上げて後孔に潤滑油を垂らす。
「ふぁ、ん」
 トロトロと太ももを流れおちるそれに甘い声をあげて、指を中へ入れると随分と柔らかく奥の方まで入り込んでいく。
「良く解されているね。ねぇ、俺を想いながらしてくれたの?」
 甘い香りを漂わせながらくちゅくちゅと音をたてて解されていく後孔に、指をもう一本増やす。
「ふぇらるどの、事を、思いながら、あぁっ、お風呂場で……、んっ」
 お風呂場で後を解する姿を思い浮かべ、フェラルドのモノがぐんと大きくなる。
「それは、是非とも見てみたい光景だな」
 さぞかしい色っぽくていやらしいだろうなと舌なめずりをし、指をさらにもう一本増やす。
「ひぅっ」
 のけ反るルージェに、
「指三本は未経験だった?」
 と指をばらつかせながら動かせば、良い所をかすめたかビクッと大きく身を震わせる。
「や、ふぇらるど、もう、いれてぇ」
 目から涙を口元は涎を流しながら懇願するルージェに、
「駄目だよ。もう少し解さないと痛いことになるから」
 それでも入れて欲しいとせがむルージェに、ふぅとため息をつき。
「酷くしたくないのにな」
 といいながらも、ルージェがあまりに可愛くてフェラルドの方も限界だった。
「フェラルド、お願い」
 指を抜き取り、うつ伏せだったルージェを仰向けにし、足を広げて後孔へと自分のモノを宛がう。
 ゆっくりと中へと挿入されていくフェラルドの熱いモノは、予想以上に質量があったか、
「ひっ」
 息を止めて身をかたくするルージェに、力を抜くようにと頬を撫でてやれば、ベッドに身を預けてフェラルドのモノを受け入れる。
「ルージェ、頑張ったね」
 奥まで入ったよと口づけをし、ゆるりと腰を動かす。
「あ、フェラルドっ」
「痛くないか?」
「はい。大丈夫です」
 だから、と、まるで激しくされるのを懇願するかのように腕を撫でてくる。
「では、遠慮なく」
 そう激しく腰を動かしはじめれば、嬌声をあげて善がるルージェだ。
「ルージェ」
 ぎらぎらとした目を向けるフェラルドに、
「まるで剣術の稽古をしている時の貴方のよう……」
 雄雄しいですとうっとりとした視線を向けてくる。
「ふふ、ルージェが俺をそうさせているのだぞ?」
 可愛い奴目と腰を突き上げれば、
「あぁっ、もう、限界です」
 とルージェが欲を放ち、そしてフェラルドも彼の中で達した。

 ほどよい倦怠感を感じながらルージェを抱きしめれば、甘えるように胸へと頬を摺り寄せてくる。
「フェラルド、スッキリできましたか?」
 自分はちゃんと役目を果たせたかといいたいのだろうか。フェラルドの事ばかりを優先的に考えてくれるルージェが愛おしい。
「あぁ。ルージェの中はとても柔らかくて気持ちが良かったよ」

 と髪を撫でて口づけを落とす。
「良かったです」
 素直に喜ぶルージェに、はじめて出会った日からの事が走馬灯のように思いだされる。
 ルージェとは色々とあったが、今は伴侶となれて幸せだ。
「一生、幸せにするからな」
 そうルージェの手をとり。
「フェラルド、嬉しいです」
 と瞳を潤ませるルージェの手の甲に口づけをした。