甘える君は可愛い

年下ワンコはご主人様が好き

 途中までは一緒に帰りたいと言われて、駅の方向と逆だからと会社の玄関ロビーまでと一階へと降りる。
「それじゃ、待ってますね」
「解ってる。俺が行くまで連絡してくるなよ? 出ないからな」
「それも駄目なんですか」
「あぁ。守れなかったらご褒美はやらない」
 いいなと念押しをして久世と別れる。
 途中で必要な材料とお土産にお勧めのワインを購入し、連絡を入れてから喫茶店へと向かう。
 既に店はCLOSEの釣り看板がぶら下げてあるが、波多が来るのを店で待っていてくれている。
「波多さん、いらっしゃい」
「遅くなってしまって」
「気にするな」
 住まいはこの二階にあるのだと、戸締りをしながら上を指さす。
「へぇ、近くで良いね」
「そうなんだよ。移動時間がない分、ゆっくりできるしな」
 階段を上がっていき二階玄関の扉を開ける。
「さ、どうぞ」
「お邪魔します」
 中へと入り、荷物をリビングに置かせてもらいキッチンへと向かう。
 土産のワインを渡し、早速、お菓子作りを開始する。今から作るのはクッキーとマフィンだ。
「まずはクッキーから」
 解りやすい江藤の説明に、戸惑うことなく作る事ができた。
「後は冷蔵庫で休まてから焼くから、その間はマフィン作りをしようか」
「はい」
 再び説明が始まり、それを聞きながら波多は手を動かし続ける。
 出来上がった生地を型に流し込み、予熱で温めておいたオーブンへと入れる。先にマフィンを焼いて、その間にクッキーを焼く準備をする。
 冷蔵庫で寝かせたクッキーの型抜きをし、クッキングシートを引いた天板へのせる。
「型抜きって、意外と楽しいものなんだな」
「これにアイシングをしたりするのも楽しいぞ。メッセージを入れる事も出来るし」
 アイシングは粉砂糖と卵白で出来る。そこにレモン汁をいれたり、アイシング用の食用色素を入れたりするようだ。
「さて、そろそろ焼き上がりそうだ」
 クッキーの準備をしている間に、マフィンが焼き上がる。
 中から取り出すと甘くて良い香りがする。
「うん、見た限りは良いな。次はクッキー。同じ温度で大丈夫だから」
 焼き上がりを待つ間、マフィンの味を見ることになった。
「食べてみないと解らないしな」
 そう言われ、江藤と半分ずつにする。
「紅茶で良い?」
「はい」
 マフィンと共にジャムと紅茶が運ばれてくる。
「ジャムは俺が作ったんだ。試してみてくれないか」
「え、こんなに何種類も?」
「あぁ。俺の恋人って甘党なもんでね」
「恋人さん、愛されてるな」
 江藤に愛されている恋人が羨ましい。
「波多さんだって、そうでしょう? 愛されているよね、彼に」
 と言われ、波多は違うとばかりに激しく首を横に振るう。
「アイツは犬で、会社でも飼い主の様な扱いをされているから、仕方なく世話をしているだけだ」
「でも、好きじゃなければ作ってあげようなんて思わないんじゃないか」
 言葉に詰まる。
 何も言えない波多に、更に江藤が語りかける。
「彼の事、どう思っているんだ?」
「……わからない」
 あの日、確かに久世に恋心を持った。だが、それは告白するまもなく終わった事だ。
「わからないって、波多さんの気持ちをそうさせるような事でもあったのかな」
 江藤は全て話してしまいたくなるような、そんな雰囲気を持っている。
「実は……」
 久世の研修担当になった事、彼の明るさに惹かれて恋をしてしまった事。そして彼女を紹介された事を全て話し聞かせた。
「俺は意地っ張りな性格をしているから、気持ちを素直に認める事が出来ないんだ」
「そうか。でもね、俺から言わせてもらうとすごく損していると思う」
 そういうとニッコリと笑い、
「だって、心から想う相手と恋愛をするのはすごく幸せで楽しいぞ」
 だから意地っ張りな自分を変えないとね、と、言い。
「さてと、そろそろ焼き上がるからキッチンに行こうか」
 そういうとキッチンへと向かう。
「いい具合に焼けたよ」
 オーブンから天板を取り出し、出来立てのクッキーを波多に見せる。
「冷めたら味見をしてみて」
 とクッキーをマフィンを別々に紙の袋へと入れてくれた。
「喜んでくれるといいね」
 そう手渡されて、ふにゃっと笑いながら喜ぶ久世を想像してしまう。
(すごく幸せで楽しいもの、か)
 江藤の言葉は確かにその通りだと思う。
 きっと久世となら楽しい日々を送ることができるだろう。
 久世からは既に告白されているのだ。後は波多が素直になるだけだ。
「江藤さん、ありがとうございました」
「ほら、彼、待っているんだろう。はやく行ってあげなよ」
「あぁ。また、喫茶店に行くから」
「うん。待ってる」
 紙袋を手にし、波多は江藤の部屋を後にした。

※※※

 江藤から教わって作ったクッキーとマフィンをテーブルの上に置いておき、甘いにおいがついていたらバレそうなのでシャワーをして着替えてから久世の家へ向かった。
「波多さん、おかえりなさい」
 抱きついて鼻を首筋に近づけてすんすんと匂いを嗅ぐ。
「お風呂に入ってきたんですか?」
「あ、あぁ。臭かったから」
「そのままの匂いも好きですけど、お風呂上りはなんか、ムラムラするというか……」
「こら、いつまでも匂いを嗅いでいるつもりかよ」
 久世を引き離してどこが舐めたいのかを聞く。
「お尻がイイです!」
「尻、だと?」
 流石に引いた。
 ジト目で見れば、久世は開き直って変更する気はないと言い切った。
 どうしてそんな所を舐めたいのか、波多には理解できないが約束なので仕方がない。
「シャワー浴びてこい。寝室で待ってる」
「はい!」
 良いお返事をし、バスルームへと向かう久世を見送る。
 本当に自分は久世に甘くなったものだとしみじみと思う。

 後孔に久世の舌がぬめぬめと蠢く。
「んぁっ、そンな所舐めんじゃない」
「後のお口、俺のを咥えたがってひくひくしてますよ。可愛いですねぇ」
「お前のなんか……、ひぅ、こら、揉んでいいなんて言ってないぞ」
「でも、物足りないんじゃないですか?」
 その通りだ。尻を揉まれ後孔の先の方だけ舐められているだけで、まどろっこしいだけだ。
 特になんの反応もみせなければ、飽きて「もういいです」と言いだすのではと思っていた。
「波多さんの中に挿入したいなぁ」
 お互いに気持ち良くなれますよと言われて、尻を舐めたいといった理由に気が付く。
「このやろう、それが目的かよ」
「えへ」
 舌をちょこんと出す久世。有名な洋菓子店のマスコットキャラの様な仕草を見せるが、可愛くないしムカつくだけだ。
「えへ、じやねぇ。絶対に入れさせねぇし。お前なんか素股でイっとけ」
 思わずそう口にしてしまい、ハッとなる。
「なし、だ、今のは!!」
「えッ! 素股でイっていいんですか!!」
 波多と久世の言葉が重なり合う。
 そして、久世がニッコリと良い笑顔を浮かべる。
「波多さんからのお許しがでたので、ヤらせて頂きます」
「大輝、冗談だからって、うわぁっ」
「駄目ですよ。冗談で済ませようなんて思っちゃ」
 抱き寄せられて、太ももの間にかたくて熱いモノが入り込む。
 腰を掴まれ激しく揺さぶられる。その度に自分のモノに擦れて芯が熱くなる。
「んっ」
「はたさん」
「ふ、あぁぁ」
 久世が波多の手を掴み、そのまま胸元へとやられる。
「大輝、そこにさわるのは、許してな、あっ、い」
「俺は波多さんの手を掴んでいるだけですよ」
「やっ、触ってる」
 指先に自分の乳首の感触があり、それを目を細めて見つめている久世がいやらしい。
「波多さん、乳輪を、こう、円を描くように弄ると気持ち良くないですか?」
 人差し指を差すように強く手を握りしめられて、円を描きながら撫でていく。
「大輝、いやだ」
「突起してきましたね、ここ。今日はお尻を舐めるのと素股しか許されてないんで、波多さんが自分で弄って気持ち良くなるしかないんですよ?」
 ぐいと両方の指が乳首を押しつぶし、ぐりぐりと動かされる。
 久世のモノと擦れる快感に、波多は高みにのぼっていく。
「やだぁ、はなせっ」
「今度は一緒にイきたいです」
「んっ、バカ犬が。あっ、あぁっ」
 びくびくと震え欲を放ちあう。
 まじりあった蜜が太ももをつたい落ちていく。
「一緒にイけましたね」
 ちゅっと唇にキスされて、深く息をはいて久世にもたれかかる。
「大輝、俺の手だからって許可してない事をするのは禁止な」
「えぇっ、あれは波多さんが自分で触ったんですよ?」
 気持ちよさそうでしたね、と、耳元で囁かれて、肘鉄を腹に食らわす。
「うぐっ、酷い」
「風呂に入る。ついてくるんじゃねぇからな」
 ベッドにうずくまる久世にそう言い捨て、波多はバスルームへと向かった。