恋をする甘党の彼

後輩は先輩に片思い中

 勢いよくベッドから落ちた。
 というか突き落とされたというのが正しいのだが、その衝撃で眼は醒めたが寝起きのため頭は回転しておらず、一体何が起きたのかすぐには理解できなくてぼんやりとベッドの方を見れば、真野が真っ赤な顔をして座り込んでいた。
(あぁ、そうだった。一緒に寝てしまったんだっけ)
 信崎は床に座ったまま、顎だけベッドの上にのせて真野を見上げて、
「随分と乱暴な起こし方をするなぁ」
 と苦笑いをしながら言う。
「なんで、信崎さんとベッドに、ていうかここ何処ですか!!」
 真野はどうやら混乱しているらしく、何故か身を守るように布団を掴んでいる。
 信崎の事を手が早そうに見えるのだろうか。だとしたら傷つくなぁ、なんて思いながら何もしないよとばかりに両方の手の平を真野の方へと向け、落ちつけよというようなジェスチャーをする。
「ここは俺の家の寝室。で、江藤から連絡を受けて酔っぱらってたお前を連れてきたという訳」
「江藤さんが信崎さんに連絡したんですか!?」
「あぁ。随分飲んでいたみたいだな」
 そう言葉を口にした途端、真野はビクッと肩を揺らすが理由を答えるのではなく別の事を口にする。
「じ、じゃぁ、なんで一緒に寝ていたんですか?」
「ん? 二人で寝ても十分に寝れるだろ、このベッド大きいし。だから」
 たいした理由は無いとばかりに言えば、今度は肩を落として項垂れる。
「……そう、ですよね」
 そのままシーツを掴んで黙り込む真野に。
「で、お前はどうしてそんなに飲んでいたんだ?」
 と理由を尋ねる。
 肩が揺れ、ハッとしたように顔を上げる真野だが、口を開きかけて閉じてしまう。
 暫く無言のままであったが、ぽつりと真野が呟いた。
「お祝い、です」
「お祝い? 何の」
「女っ気のなさそうな信崎さんに、親しいそうな女性がいたから。だって、だらしのない貴方に好意を寄せて下さる女性なんて、この先現れないかもしれないんですよ? だから上手くいけばいいなという思いも込めまして」
 そう捲し立てる真野に、信崎は苦笑いを浮かべ。
「おいおい、随分な言われ様だけど、俺、結構モテるのよ? って、まぁ、それはひとまずおいといて」
 いったん、一息入れ。
「実はさ、坂下さんからは結婚前提でお付き合いして欲しいと言われた」
「そう、なんですか。……おめでとうございます」
 傷ついた顔を浮かべながら必死でそう口にする。そんな真野に対して信崎はスッと目を細めて額を弾いた。
「え、痛ッ、な、何をっ」
 弾いた箇所に手を当て、困惑する真野が信崎を見る。
「無理するな」
 信崎の言葉に目を見開き、すぐに顔を反らしてしまう。
「別に無理なんてしてませんよ」
「今にも泣きそうな顔してるぞ」
 と真野の顎を掴んで自分の方へと顔を向かせれば、嫌だとばかりにその手を振り払おうとする。
 だが信崎は離すことなく真野の唇へと親指を滑らせる。
「や、信崎さんッ」
「なぁ、真野。お前の本心を聞かせろよ」
 指を離し、頬を両手で包み込むと顔を近づけて真っ直ぐに目を射抜けば、すぐに真野の目が信崎を睨み返す。
「俺の本心なんか聞いてどうするつもりですか? 一度、貴方にフラれているのに、またあの時みたいに辛い想いをしろというんですか!!」
 酷いですと言い目を伏せる。
「……真野」
「俺は、貴方が幸せならそれで良いんです。だからッ!」
 これ以上、言わせないでくださいと言う真野に。
「なら、お前が俺を幸せにしてくれよ」
 とその身を抱きしめた。
「え?」
 困惑する真野に、
「俺が幸せならそれで良いんだろう?」
 と、彼の額に額を合わせ。互いの距離が息がかかるほどまで縮まる。
 目元を赤く染めた真野の姿がとても色っぽい。
「休日に真野と過ごす時間が心地よくて好きだ。俺に好意を持っていてくれる限り、ずっと続くんだって思っていた」
 真野の好意に甘えて自分から何もしてこなかったんだと、さらに距離を縮めていく。
「のぶ、さき、さん」
「真野、好きだ」
 唇にかるく触れるくらいの口付をすれば、ふにゃっと顔をゆがめて涙を流す。
「うそじゃ、ないですよね?」
「あぁ。嘘じゃない」
 愛してるよと深く唇を重ねる。絡まり合う舌は熱く欲を乱し。
「ふ、あぁ……」
 すっかりたちあがってしまった真野のモノに、信崎の手が遠慮なく触れる。
「ちょ、信崎さんッ」
「キス、気持ちよかったな」
 俺もだよと、真野の手を掴んで今度は自分のモノに触れさせた。
「……うそ」
 顔を赤く染めて嬉しそうに真野が見つめてくる。
「なぁ、もっと気持ち良くならないか?」
「え、や、でも」
「こんな状態で、嫌だなんていわせないぞ?」
 そう口角を上げて真野を見れば、真っ赤になって信崎を見つめていた。
「本当に、良いんですか?」
「あぁ。真野を抱きたい」
 と顔を近づければ、真野は照れながら嬉しそうに微笑んだ。

 真野の乳首に食らいつきながら、もう片方も摘まんで刺激する。
「んんっ、のぶさきさんッ」
 もっと感じたいとばかりに胸を張り、突起した箇所を主張され。舌先で転がしてちゅっと音を立てて吸い上げれば、赤くぷっくりとした箇所は唾液で濡れてテラテラとしている。
「あぁ、んッ、俺の乳首、じんじん、かんじちゃう」
 真野がトロンとした目で見つめながら、濡れた乳首を指先で触れる。
「エロいねぇ、お前」
 まさかヤっている時の真野が、こんなにもエロく、そして可愛くなるなんて。
 もっといやらしい真野を見たいとばかりに、彼の視線に入るように指ごと舌先でいやらしく弄ってやる。
「やん、自分の指でこすれて、キモチイイ……」
 と真野がふにゃっと表情を崩し、信崎の唾液で濡れた指を自分の口へと持っていき舌で絡める様に舐める。
 それがなんとも扇情的で。信崎のモノは素直に興奮して更に大きさを増した。
 そろそろ自分のモノが真野の中に入りたがっている。
 真野をうつ伏せにして後孔に舌を這わせる。
 ローションのかわりに唾液をたっぷりと滴らせ、指をゆっくりと中へと入れた。
 入れた瞬間は身をかたくしていた真野だが、指が増えていくたびに切なく声をあげ、三本目が入った所で欲を含んだ目で見つめられ。
「のぶさきさぁん、後ろに貴方のおっきのが欲しい、です」
 と、可愛く強請られた。
 そんな事を言われ、自分の欲を押さえておくことは出来なかった。
 指をぬき、真野の中へと自分のモノを進めていく。
 あきらかに違う質量に、真野はひゃっと声をあげて息をつまらせる。
「ん、真野、力を抜け」
 真野の背中を摩りながらゆっくりと奥へ進めていく。
「はぁっ、くぅ……、ふ」
 メキメキと音を立て入り込んでいくうちに、辛そうだった真野に変化があらわれる。
「んッ、あ、……あぁ、ん」
 身体が小刻みに震え甘い鳴き声を上げた。
「どうやら良い所に当たったようだな」
 ニィと口角を上げ、そこを突き上げれば、ひゃんと声を上げてぎゅっと信崎のモノを締め付ける。
「はぁ、ん、そこ、きもちぃぃ」
 恍惚とした表情で口を半開きにしながら快楽に溺れる真野に、信崎のモノが中で更に膨らむ。
「のぶさきさんの、また、おっきくなった」
 いかにも嬉しそうにいうものだからたまらず内壁を激しく突けば、互いに絶頂を迎えて欲をはきだした。

 真野を腕の中に抱き寄せる。
「朝からサカっちまったな。体、辛くないか?」
「大丈夫です。多少つらいですけど、今は貴方と一つになれたことが嬉しいので」
 平気ですと真野が信崎の胸に頬を摺り寄せてくる。
「俺も、お前が可愛すぎてどうにかなりそうだよ」
 そう耳元で囁いて口づけを落とせば、どうやら照れているようで顔をぐりぐりと押し付けはじめる。
「わぁー、わぁー、なんかすごく照れくさいんですけど」
「どれどれ、照れている顔を見せてごらん」
 と顔を近づければ、見ないでとばかりに手で視界をふさごうとするので、その手を掴んで封じると軽く口づけを落とす。
「ふふ」
 そんな甘いやり取りに、嬉しそうにする真野がすごく可愛い。
「さて、真野、一緒にでも風呂入ろうぜ」
 後ろを洗ってやるよと真野の中に注ぎ込んだ蜜で濡れる尻を撫でる。
「もう、信崎さんの助平」
 なんていいながら、満更でもない表情を浮かべている。
(そういう所もたまらないけどな)
 可愛い恋人にもう一度口づけをしてベッドから起きあがると、運んでとばかりに手を広げてくる。
 その身を抱き上げてお姫様抱っこをすると、真野が嬉しそう笑った。

◇…◆…◇

 ニヤニヤとする江藤の姿に、信崎は居心地の悪さを感じていた。
 恋人同士になった事は真野から既に聞いたらしく、自分が来るのを待っていたという。
「いやぁ、信崎がまさかねぇ」
 女の子大好きだったのにねぇと、からかうように言い手で口元を押さえる。
「うるさいよ、江藤」
 紙のおしぼりを投げつけると、乱暴だなぁと言いつつ江藤はそれをキャッチしてごみ箱へと捨てる。
 いれたての珈琲を信崎にだし、ふ、と、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「俺ね、真野君の事大好きだからさ、うまくいってくれて良かったなって」
 あ、信崎の事も好きだよと、ついでのように言われる。
「高校からの付き合いだっていうのに、なんか悲しいぞ」
「あはは。でも、本当、嬉しいよ」
 心から祝福してくれているのが解る。だから信崎の心がほっこりと暖かくなるのだ。
「ありがとうな、江藤」
「てことで、今度は四人で飲もうね」
「あぁ」
 約束だからねと、指切りのポーズをする。
 それに解ったと応え、珈琲の入ったカップを持ち上げて口へと運んだ。